2022年2月8日火曜日

第2946話 浅草六区のロースカツ

上野の次は浅草の偵察&探索。

うら寂しい観音裏からスタートしたが

いつにも増して人影は少ない。

言問通りを馬道で渡り、観音さま周辺を歩く。

 

一時は戻った仲見世の人出も半減した。

新仲見世を抜け、

かつては浅草一の繁華を誇った六区へ。

現在は六区ブロードウェイと呼ばれる。

 

通りを往ったり来たりし、

洋食の老舗「リスボン」に入店。

2008年6月以来だから、およそ14年ぶり。

ずいぶんご無沙汰しちゃったな。

 

フロア担当のオバさんがオネバさんに替わった。

アサヒの縄張りでキリンしか置かぬ、

特異な店でラガーを飲みつつ厨房を眺めていたら

あのオバさんと思しき方が調理の補助をしている。

シェフも代が替わったようだ。

 

はは~ん、女性二人は容姿が似ているから

母と娘かもしれない。

となると料理人は婿さんかな?

 

それはそれとしてロースカツを半ライスで通す。

(並)(上)(特)の三段構えは

それぞれ90011001500円。

訊けば、違いは肉の厚さだけ。

一番薄い(並)をお願いする。

箸袋に

洋食 リスボン 六区ブロードウェー商店街

とあった。

 

ロースカツは本当に薄かった。

熱が通り過ぎて豚肉はパサパサ。

コロモはガシガシである。

昔からハンバーグに感心しなかったが

ロースカツは上出来だった。

代替わりはここまで出来映えを変えるのか―。

 

文豪・永井荷風はかの大戦をはさんで

ずっと浅草を愛し、戦前・戦後とも通い詰めた。

最晩年は今は無き「アリゾナ」を愛好したが

「リスボン」にもたびたび現れている。

 

彼にこのロースカツを提供したら

「わしは入れ歯で歯が立たないヨ」―

往生極まるに相違ない。

草葉の陰で嘆いていることだろう。

 

ゆく川の流れは絶えずして

しかももとの水にあらず

哀しむべし。

 

「リスボン」

 東京都台東区浅草1-25-18

 03-3841-3663