2022年2月10日木曜日

第2948話 背肝が背中を向けていた

暮れなずむ神楽坂。

色気漂う街に夜の帳が降りようとしていた。

17時半、開店と同時に焼き鳥酒場「駒安」に入店。

のみとも・B千チャンと訪れたのは3年前だ。

 

そのまた2年前、背肝(脾臓)が食べたくて

谷中・初音小路の「鳥真」に彼と出向いたが未入荷、

2年越しで谷中の仇を神楽坂で討ったわけだ。

 

好きな店なのに3年もの無沙汰。

口切りだから先客はいない。

ドライとキャベジン(キャベツ浅漬け)を通す。

この一鉢で一日分の野菜が摂取可能となる。

 

壁の品札を見上げた。

♪ 見上げてごらん 店の札を ♪

九チャンの歌声が聞こえてくる。

それはそれとして

フィギュアスケートの鍵山クンって

九チャンの若い頃に似てるよネ。

 

おや? ん? ありゃあ!

意中の背肝が見当たらん。

再び、ん? 十数枚の木札の中で

1枚だけ裏返っていた。

 

イヤな予感。

ヤな汗が一すじツツ~っと。

今度は小林幸子が歌い出した。

 

♪  もしかして もしかして

  背肝にふられた時は

  お酒の席のことだけど

  笑ってごまかせない私 ♪

   (作詞:美樹克彦)

 

「今日は背肝ないの?」

「ええ、入って来なくて・・・ごめんなさい」

「たまたま? それともずっと?」

「たまたまですけど、入らないと続くんすヨ」

二番手のオヤジさんとの会話である。

 

背肝の木札は背中を向けていた。

仕方なくハツモト、ふりそで(肩肉)を塩。

ねぎま、レバーをタレで通す。

大瓶をお替わりして、ソリ(もも肉の付け根)を塩。

締めはハラミ(横隔膜)をやはり塩で―。

ハラミのクニュクニュ感は大好きだ。

 

ここでハタと思い当った。

昔から背に腹はかえられないと言うけれど

そんなことないネ、

背肝にハラミはかえられました。

 

「駒安」

 東京都新宿区神楽坂1-11

 03-3260-3549