2024年5月21日火曜日

第3540話 あの頃の東京にドップリ

神保町シアターの「戦前戦後 東京活写」は
余すところあと数日、ずいぶん観まくった。
あの頃の東京にドップリ浸かったのだ。
直近観た4本を駆け足で紹介したい。

「銀座化粧」(1951 新東宝)
埋め立てられて姿を消した三十間堀が
何度も何度も画面に現れる。
米軍の空襲による灰塵と瓦礫を処理するために
戦後まもなく埋められた。
貴重なのはこの年に開業した東京温泉の建設工事。
日本初のサウナはマッサージのため、
サービスガールを置いたという。
主演の田中絹代を抑え、助演の香川京子が美しい。

「下町の太陽」(1963 松竹)
前年、倍賞千恵子が歌ってヒットした、
「下町の太陽」に乗じて撮られた歌謡ドラマ。
舞台は墨田区・曳舟。
映画に映るプラットフォームは
東武伊勢崎線の駅だろう。
相手役は大空真弓との間に
一児を設けて別れた勝呂誉。
倍賞は八十路にしていまだに
コンサートがひんぱんに催される。
女優が本業と思われるが
二葉あき子ほどではないにせよ、
歌手生命も相当に長い。
けして美人じゃないけれど
子どもの頃など、利発そうで可愛く、
当時の彼女の家庭教師が
永六輔だったことはあまり知られていない。

「乙女ごころ三人姉妹」(1935 PCL)
PCLは東宝の前身。
舞台は浅草で戦艦のような松屋デパートが
吾妻橋の向こうにたびたび映される。
次女役の堀真佐子が素朴に可愛く、
典型的な戦前昭和の女性像を地で演じる。
三女の梅園龍子は逆にアプレゲール。
ダンサー上がりのこの女優は毎度こうだ。

「銀座二十四帖」(1955 日活)
川島雄三の作品らしくウイットが効いている。
銀座のデパート御三家、
松屋・三越・松坂屋の揃い踏みは圧巻。
映画の2年後、 ’57年に
開業するそごうがまだ更地状態。
この映像の希少価値はとてつもなく高い。
裕次郎と出逢う前の北原三枝が元気はつらつ。
瞠目するのは15歳の浅丘ルリ子。
初々しい花屋の売り子がのちのち、
大女優に成長することなど誰が想像できたろう。

てなこってシリーズは5月24日まで続きます。