2014年11月19日水曜日

第972話 都内に「ときわ」は数あれど (その2)

高倉の健サンが逝ってしまった。
ここ1年ほど、姿を見せなかったので心配はしていた。
もともと衰えた様子をさらすタイプの人ではないから
ヒドく健康を害して闘病生活を送っていたんだと思う。
渥美の寅サンのときもそうだったが
巨星の訃報はある日突然やって来る。

ここでさっそく、健サン映画のマイ・ベストファイブと
いきたいところなれど、それはまた日をあらためたい。
ご期待あられたし。
期待なんかしてねェってか?

それはそれとして、駒込はアザレア通りの「食堂 ときわ」。
相棒の到着を待ちながら独りビールを飲りつつ、
突き出しのコンビーフ・ポテトを口元に運んだところだった。

「ややっ、何だよコレッ!」
咀嚼(そしゃく)した直後、言葉を失った。
おそらくおおかたの読者はトンデモないモンを口にして
ゲッとばかりに吐き出したんだろうと、思ったんではないかな?

いえ、いえ、それは違います。
意に反してこのコンポテがびっくりするほど美味だったんだわサ。
その勝因は新じゃがクンである。
丸ごとではなかったから、新じゃがとは気づかなかったが
コンビーフとの相性もよく、とってもよかった、旨かった。

ちょくちょく訪れる浅草の「神谷バー」。
腰を落ち着けるケースはべつとして
サクッと飲みの場合はだいたい、大か中のジョッキを2杯。
つまみはおおかたポテトサラダか、
ジャーマンポテトか、串かつということになる。

「ときわ」のコンポテに一番近いのは
「神谷」のジャーマンポテトだが
今宵のコンポは、あの夜のジャーポの上をいった。
讃えるべし。

ふ~む、コイツはいいや。
恥も外聞もなくオバちゃんに訊ねたネ。
「すいませんけどこのお通し、つまみで一人前はムリだよネ?」―
オバちゃんイコール女将なのだが
「そんなに作ってないんですよォ」―
そりゃそうでしょう、わがままホザいたオイラが悪かった。

このときズボンの左ポケットがぶ~るぶる。
相方のM鷹サンからのメール着信である。
仕事上のリトル・トラブルにより遅刻、ゴメンなさいとのことだった。
いいでしょう、いいでしょう、こちとら独り飲みも大好きなんだ。

=つづき=