2014年11月21日金曜日

第974話 廉価に敬意ははらえども (その1)

小学校時代の一時期、下町は深川の門前仲町に住んでいた。
正確には門仲から牡丹町を抜けた古石場なる、
その町名からして古ぼけた場所。
隣り町の木場はあれほど有名なのに
古石場なんて東京人でも知らないほうがはるかに多い。
まっ、それはそれとして
江戸の昔から木材は木場、石材は石場だったのだろうヨ。

かれこれ半世紀にもなるが
当時の飲食店舗で今も記憶に残っており、
なおかつ営業を続けているのは
深川不動尊参道入口、甘味処の「伊勢屋」と
そのはす向かいの「魚三酒場」くらいのものだ。

林芙美子が最後の晩餐に訪れたうなぎの「宮川」。
お不動様と八幡宮を結ぶ脇道にあった八ツ目うなぎの屋台。
それと何といったかな? う~ん、思い出せない・・・
お婆ちゃんが独り細々と参道で商っていたきんつばの小舗。
み~んな無くなってしまった。

その夜は門仲の北に隣接する清澄で宴席があった。
天竜川の天然鮎を楽しんだのだが実はその前、
例によって独り早めに深川に現れたJ.C.は「魚三酒場」にふらり。
昭和29年創業の飲み処だが、それ以前は鮮魚店だったという。

店先には順番待ちの呑ん兵衛が4~5人並んでいたものの、
10分と待たずに1階のカウンターに着席の巻である。
30分は覚悟のうえでやって来たこの身、上々のすべり出しと言えよう。

おっとォ~、目の前に名物女将の雄姿である。
女嫌いのこの女将は殊更若い娘とみるや、
イビるわ、イジメるわで、傍で見てると、
ギャルたちが哀れに思えてならなかった。

それがどうしたわけか、今宵の女将は元気がない。
しばらく来ないうちに虎が猫に変身したのかい?
こうなっちゃうと何だか張り合いがないねェ・・・。
女の客に対するあしらいもごくフツーだし・・・。
エニウェイ、世のオヤジギャルには朗報であろうヨ。

さっそくスーパードライの大瓶である。
これが520円、安いといえば安いが
上野・御徒町界隈には敵わない。
何せ向こうは400円代前半だからネ。
東京で一番安いんじゃないかな。

こののち宴会が控えているからつまみは1品に限ろう。
いや、どう転んでも2品に抑えねばならん。
そうして見やった壁の品書きであった。

=つづく=