2020年10月2日金曜日

第2494話 とんかつ 一か八か (その2)

東急目黒線・不動前駅の前で思案投げ首。
銭形の親分なら胸に思案の月を見るところなれど、
行くべき店がとっさに思いつかんヨ。
電車に乗って大岡山・田園調布方面か、
いっそのこと多摩の流れを越えて新丸子・武蔵小杉か—。
いや、やはり近場で探そう。
 
てなこって五反田に向け、歩き始めた。
山手通りを横断すると、バス停に数人の待ち人あり
エ~ッと、このバスは確か渋谷と大井町を結ぶ路線のハズ。
時刻表によれば、あと2分で来るが4~5分は遅れるのが常。
急ぐ身でもなし、人々の列に加わった。
 
これが意外に面白いんでやんの。
大崎駅を過ぎてしばらく、目黒川に架かる居木橋を渡る。
ん? ”いるぎばし” なんて聞いたことないゾ。
帰宅して調べたら、今は移転したが
昔は近くに居木神社もあったらしい。
 
ずっと山手通りを走っていたバスは
新馬場で第一京浜に入り、青物横丁を経て大井町駅に—。
揺られながら狙いを定めたのはまたしてもとんかつ、
「丸八とんかつ店 本店」である。
上野「まる一」から大井町「丸八」へと
八倍返しだァ!
ど~お? 直樹チャンもビックリだわよネ、黒崎チャン?
 
15時半に入店。
距離を保ってカウンターの一番奥へ。
掛川のうなぎ屋と同じじゃないか、
なんて思い出しつつ、サービス並カツ定食を注文。
 
この一品、どこがサービスなのかというと、
上ロースでん、ヒレでん、串カツでん、ポークソテーでん、
いずれも単品を定食仕立てにすると、
450円アップなのに+200円でいただけて250円おトクなのだ。
 
席ではなくとも店主に女性スタッフ3人、忙しそう。
整った定食は主皿に8切れカットのロースカツ。
並カツだからやや薄めながら食べ応えじゅうぶん。
 
キャベツもタップリで
豚汁は数片の小間切れに玉ねぎ・にんじん・ごぼう。
これは「まる一」とまったく一緒。
ただし、野菜のカットがかなり大きい。
詳しいことは判らないが
この2軒は同じ源泉の流れを汲むのだろう。
蒲田と大森にある「丸一」あたりの。
 
炊き上がり上々のごはんは2杯目無料、3杯目200円。
新香が付かないのはさびしい。
ほどよい脂身に旨みのある赤身のカツ。
細かいパン粉を用いたコロモが
最初カリッときて、やがてシットリ、ユニークだ。
 
白木のカウンターに中濃ソースがあるばかりで
塩・醤油・七色・爪楊枝・紙ナフキンの類いは一切ナシ。
これを潔いと見る向きもあろうが、そうではあるまい。
あまりにも味気なく、愛想もなさ過ぎ。
よって”とんかつ 一か八か”の一戦は
上野「まる一」に軍配であります。
 
「丸八とんかつ店 本店」
 東京都品川区東大井5-4-10
 03-3471-2681