2020年10月13日火曜日

第2501話 薩摩の芋と壱岐の麦 (その1)

上野のそば屋でたまたま隣接の機会あり、
対話が始まったら妙にウマが合い、
それじゃまた酒を酌み交わそうと約したS方クン。
ドイツ車のメーカー勤めでJ.C.より一世代は若い。
いや、もっとかな?
よって、その節はご馳走する旨、伝えておいた。
 
9月半ばに上野の隣り、湯島の赤提灯で飲んだが
彼、いつの間にやら会計を済ませ、
かたくなに代金を受け取ろうとしない。
おい、おい、少しはオッサンの立場を考えておくれ。
 
らちが あかないので間を空けず、また飲むことに―。
お返しは赤提灯より多少は高級な店を択ぶ。
三倍返しとまではいかないが、倍返しだァ!
 
日暮里駅と西日暮里駅のちょうど中間、
JR常磐線と京成本線の線路が立体で交差する地点のそば、
「鳥のぶ」に連行した。
世に此度の災厄が及ぶ前は予約の取りにくい店だった。
それでも徐々に客足が戻り、適度な賑わいを見せていた。
 
互いに好きな銘柄の中瓶を発注し、
再会を祝してグラスをカチン。
いきなり温かいお通しが出て来たゾ。
春雨使用の冷製中華サラダってのはよく目にする。
その応用か、米粉使用の温製中華サラダといった風だ。
 
当店の主力はもちろん焼き鳥。
ところが生モノがかなりのレベルに達し、
鳥以外の肉系も牛ハラミや仔羊をこなす。
さらにパスタ、炒飯、オムライスなどの食事メニュー。
はてはデセールのクレームブリュレやサバランと
守備範囲がきわめて広い。
いや、ここまで揃うと、もはや守備ではなく、
分厚い攻撃力というほうが正しい。
 
初めに焼き鳥を見つくろった。
はつ・さえずり・ふりそでを塩。
ればだけはタレにしてもらい、みな2本づつ。
さえずりは気管及び食道で焼きとんだったらナンコツだ。
ふりそでは胸肉と手羽元のつなぎ目に当たる部位。
 
詳しい産地は不明ながら
宮城産の生がきを4ピース所望すると、
店主、わざわざ厨房から出張って来て
残り2ピースとのこと、まだ入荷が少ないらしい。
あとは相棒のリクエストにより刺し盛りをお願いした。
 
=つづく=