2020年10月5日月曜日

第2495話 谷中では鴨と穴子ときつねそば

とある日曜日の午後3時。
レイト・ランチまたはアーリィ・ドリンクを求めて
住まいの近所をプラップラしていた。
時間が時間だけに通し営業の店を見つけねば―。
 
よみせ通りを谷中銀座で右折してすぐ、
脇道に入り、町中華「一寸亭」の暖簾をくぐる。
6~7割の客入りだが相当数の席がつぶされていた。
ちょいと待たされそうなので
また寄るネ」―言い残して立ち去る。
 
お次の候補は日本そばの「川むら」。
谷中銀座を突っ切り、夕焼けだんだんを上って到着。
数年ぶりの訪れは建て替え後で初めて。
此処も一番奥の卓に通されて、最近は奥ばっかり。
 
ビールは生がサッポロ、瓶はキリン。
詳しく訊かずに生を—。
するとこれがサッポロのプレミアム・ヴァージョン、
白穂の香でやんの。
アサヒの熟撰ともども有難迷惑極まりない。
庶民にはスタンダードの黒ラベル、
スーパードライのほうがシックリくるんだ。
すかさず飲み干し、一番搾りの中瓶を―。
 
つまみは鴨山椒焼き&穴子天ぷら。
8切れもある鴨には山椒ミルが添えられて
アイデアが面白く、なおかつ肉質もよい。
やぶそば系に見られる、
あひ焼きとはまた違った趣きがあった。
味付けも一般的なあひ焼きは粗塩だが
山椒焼きは甘辛の濃いタレで来た
 
一方の穴子天はいささか凡庸。
谷中・根津・千駄木、いわゆる谷根千は
けして下町ではないけれど、
古く良かりし情緒をたたえる町々。
天ぷらにもそんなざっかけなさがほしい。
揚げ油もアッサリと、不味くはなくとももの足りない。
丸一本で1500円だったかな? 割高感もあった。
 
焼酎や日本酒に切り替える気になれず、早やばやと締め。
当店では もり系ばかりでかけ系を食べた記憶がない。
だいぶ涼しくなってきたし、温かいつゆを飲もう。
めったに注文しない、きつねそばをお願いする。
 
赤いきつねみたいな油揚げがド~ンと来るかと思いきや、
上方で言うところのきざみそばが供された。
中華そばではおなじみのナルト。
その分厚いのが1枚浮かんでいたのに驚く。
さすがにつゆは江戸風の色濃いもので
フツーに美味しくいただいた。
 
信濃では月と仏とおらがそば
 
一茶自身の句ではないらしいが彼の故郷では、おらがそば。
当夜の谷中は、きつねそばを締めとした次第です。
 
「川むら」
 東京都荒川区西日暮里3-2-10
 03-3821-0737