2020年12月18日金曜日

第2549話 夏はもり 冬はおかめの そばで締め

かつて週に一度はお世話になった、

池之端の日本そば屋「新ふじ」。

この池は上野公園の不忍池。

シャンシャンがいる動物園の池之端門にほど近く、

最寄りはメトロ千代田線・根津駅だ。

 

17時半の開店直後に来ることがほとんどで

昼めしより圧倒的に晩酌だった。

大瓶を通すと柿の種&ピーナッツが付いてくる。

乾きモノに手を出さぬ性分が

柿ピーを好むようになったのはこの店のおかげである。

 

ビールのあとは菊正か大関の1合瓶に切り替える。

菊正は自宅にあるから大関が多かった。

かつての人気銘柄も最近はあまり見かけない。

 

この酒に出会うと

1970~80年代の「弁天山美家古寿司」を思い出す。

浅草きっての名店のつけ台には当時、

大関樽酒のこもかぶりが鎮座ましましていた。

 

最初のうちはつまみをいろいろ試したものの、

行き着いたのはもつ煮込み。

豚のシロを八丁味噌と信州味噌だろうか?

合わせ味噌で煮込んだ逸品は酒場顔負け。

出色の出来映えとなっている。

 

そうしておいて締めのそばだが

夏場はもり、冬場になるとおかめ。

もりは、そば自体もさることながらつゆが好き。

子どもの頃、どんな小さな町のうらぶれた商店街でも

必ず1軒はあった町そば屋、あの味がするのだ。

現代風に気取って甘みを排したつゆよりも

あの下町感、下世話感に深く親しみを覚える。

 

東京の冬など大した寒さではないけれど

それでも朝晩は冷え込むようになってきた。

此度はビール&柿ピー、菊正&煮込みのあと、

おかめそばをいただいた。

 

崩れてはいるものの、

おかめの顔がどんぶりに浮かんでいる。

二つ並んだ焼き麩は頬っぺた。

真ん中にズドンの出汁巻き玉子が鼻っ柱。

かまぼこ・ナルト・しいたけ・小松菜は

どれがどれだかサッパリ判らない。

 

ノビる前にそばを食べ切り、

具材を肴に日本酒をもう1本。

 

もりよりも 酒盃を誘う おかめそば

 

これが冬の「新ふじ」の正しい使い方である。

 

「新ふじ」

 東京都台東区池之端2-6-4

 03-3821-3913