2020年12月24日木曜日

第2553話 深川は 門仲 牡丹 古石場 (その1)

短い間ながら、かつて棲んだ深川を訪れた。

ここは隅田の川向こうの江東区。

下町といったらJ,C,の第一感は深川しかない。

メトロ東西線・門前仲町で下車した。

 

永代通りの南を並行して流れる大横川を渡って牡丹に―。

以前の地番は牡丹町だったが

いつの間にか“町”がとれちゃった。

 

古くからある店舗が存命であれば、

そこで昼めしにするつもり。

願い空しく見覚えのある店は皆無なれど、

裏路地に洋食屋が2軒並んでいた。

 

より古めかしい方を選択して入店。

立て看板に「ひまわり食堂」とあったが

ひさしのテントは「Mikado Coffee ひまわり」。

あからさまに喫茶店の居抜きだ。

 

客入りは半分くらい。

空いた卓も先客の下げもので埋まり、

スタッフの姿が見えない。

何だかゴチャゴチャ感が幅を利かせていた。

 

(やっちまったか!)

もらす息はほとんど溜め息と化した。

ほどなく奥の厨房からジイちゃんが一人、

透明人間みたいに、現る、あらわる。

どう見ても八十路に足を踏みいれてらっしゃいますな。

 

ジイちゃん見たあとはメニュー見なきゃ、ことは前に進まない。

680円均一のオススメはこんな品揃えだった。

 

カツカレー(チキンも可)

以下定食―チキンカツ とんかつ 豚肉と野菜炒め

 

通したとんかつは見た目貧相なれど肉質悪しからず。

ステンレスプレートには、ちぎりレタスと繊切りキャベツ。

その上に缶詰コーン、脇には緑色のキューちゃん風も―。

絹ごし豆腐&わかめの味噌汁とライスが意外に美味しい。

 

ビールが飲みたくなって銘柄を訊ねたら

「ええ~っと、キリンだネ」

「一番搾り? それともラガー?」

ジイちゃん冷蔵庫から1本取り出して

「アアッ、アサヒだわ!」

「ハハハ、それならちょうだい」

のどかな下町の午後である。

 

会計時に言葉を交わすと以前は3人体制だったが

奥さんが亡くなり、バイトも辞めて

現在は昼夜に渡り、孤軍奮闘とのこと。

「頑張ってネ」

「うん、アリガト」

下町の午後が何だかしんみりとしてきちゃいました。

 

=つづく=

 

「ひまわり」

 東京都江東区牡丹3-9-1

 03-3643-1352