2020年12月29日火曜日

第2556話 車子 真子 白子 海鼠子の 子だくさん

せっかく築地に出張っておいて手ぶらで帰るのもなんだし、

魚河岸をのぞく気になった。

小田原橋棟に着いた時点で閉館の15時まで15分しかない。

 

晴海通り側から入ってすぐ左の「菊市」に

小ぶりながらも良形の車子(蝦蛄)がワンケース残っている。

むかれたばかりのつぶ貝が4~5粒。

真鱈の白子はなじみの「吉池」のものより張りがあり、

鮮度の高さを証明していた。

 

奥へ進めど、まだ開け残っているのは

まぐろ屋ばかりが数店舗のみ。

うち1店で生わさびを2本買い、すぐに舞い戻った。

 

「菊市」はオネバさんとオネエさん、

二人体制で男っ気まるでナシ。

オネバさんに

「シャコは瀬戸内?」

「いえ、愛知です」

「あっそう、三河湾OK!」

 

上記3点すべて購入したところで

砕氷上に並ぶ2本の瓶詰めに目がとまる。

このわた&このこ、である。

どちらも千円ちょっとと、ずいぶん安い。

「オネエさん、これも貰おうかな」

「どちらですか?」

「このこのほうネ」

オネバさんにオネエさんを指しながら

「ついでにこのこ(娘)も貰っとこうか―」

「エッ? エヘッ、どうぞ、どうぞ!」

と来たもんだ。

 

帰宅後、缶ビールをグラスに注いで厨房に立つ。

およそ30分で整った晩酌のつまみはラップして冷蔵庫へ。

夕方のTVニュースを見、夕刊に目を通して一休み。

空腹感はなくとも本格的な晩酌に移行した。

 

食卓に並んだのは

   ケースから出しただけの茹で車子

   真子がれい昆布〆

   真鱈白子ポン酢

   長崎・佐世保特産の瓶詰海鼠子(このこ)

   つぶ貝刺身

 

②は前夜の刺身の残りを自分で〆た。

以上をよく冷やした菊正樽酒と

手搾りのライムジュース、スペアミント、

金宮焼酎のモヒート仕立てで楽しむ。

 

今宵は車子・真子・白子・海鼠子(このこ)の子だくさん。

ん? つぶ貝が余計だろ! ってか?

何をおっしゃる読者サン、これとて立派な一つの子。

誰より可愛い、ひとツブ種ってネ。

 

「菊市」

 東京都中央区築地6-26-1築地魚河岸小田原橋棟

 03-6264-7110