2023年12月13日水曜日

第3426話 津軽の海を越えて来た (その1)

この夜もまた忘年会。
いつもの仲良し六人衆である。
集結したのは奇跡的に戦災を免れた、
神田旧連雀町のあんこう専門店「いせ源」だ。

玄関脇のショウウインドウに鎮座する、
津軽海峡産あんこうの出迎えを受け、
2階に上がり、入れ込みの座敷に坐した。
昭和5年に建てられた木造建築は
この空間に身を置くだけでシアワセな気分。

一同ドライを注ぎ合い、グラスを合わせた。
通した料理はかくの如し。
あん肝刺し、身と肝のとも和え、煮こごり、
そして醤油仕立ての割下で煮るあんこう鍋だ。

当店のあんこうは
下北半島の風間浦で獲れたものが中心。
此処は本州最北端の地である。
はるばる津軽の海を越えて来たんだ。
ほうら、こまどり姉妹が歌い出したヨ。

♪ 津軽の海を 越えて来た
  ねぐら持たない  みなしごつばめ
  江差恋しや  にしん場恋し
  三味を弾く手に  想いをこめて
  ヤーレン ソーラン 
  ソーラン ソーラン
  唄う ソーラン  ああ渡り鳥 ♪
   (作詞:石本美由紀)

「ソーラン渡り鳥」は1961年のリリース。
’61年はヒット曲の当たり年。
ザッと挙げるだけでも

「銀座の恋の物語」(石原裕次郎&牧村旬子)
「君恋し」(フランク永井)*レコード大賞 
「コーヒー・ルンバ」(西田佐知子)
「スーダラ節」(植木等)
「東京ドドンパ娘」(渡辺マリ)
「川は流れる」(仲宗根美樹)
「おひまなら来てね」(五月みどり)
「湖愁」(松島アキラ)

まったくもって枚挙にいとまがない。
坂本九ちゃんの「上を向いて歩こう」も同年だが
年末発売だったため、ヒットは1962年になった。
振り返れば、珠玉の名曲揃いじゃござんせんか。

=つづく=