2025年8月8日金曜日

第3858話 鯵の開きと城ケ崎

翌朝はまず大浴場に入り、
7時から和朝食。
昨夜と同じ席で担当もロジーナ。
彼女の住まいは
他のスタッフと一緒のアパート。
ホテルの送り迎えはあるが
いったい、いつ寝てんだ?

小鉢が9品、3列3弾構え。
面倒なので内容を省く。
伊勢海老出汁の味噌椀は花マル。
七輪に鯵の開きが焼かれている。
坂上の二郎サンみたいな
鯵の目がこっちを見ていて
何か問い掛けている気がした。

「お客さん、アンタ、
 どうしても私を食うのかえ?」
意表を衝かれつつ、即答する。
両手の甲に向かって
「食べます、食べます!」

「お客さん、昨日残したプリン、
 冷やしときました」
ロジーナがかぼちゃプリンを
運んで来てくれた。
こんなことをしてくれるのは
旅館ならではだ。

大勢のスタッフに見送られ、
手を振られる中、
バスが向かったのは城ケ崎。
ロス・プリモスの久保チャンが
歌い出したが自重しておく。
浪花の小姑も五月蠅いしネ。

志摩の横山、福井の東尋坊など、
最近は高い所から海を見て来たが
此処の迫力はひと味違う。
門脇吊り橋の存在が大きい。
足元に白波砕け散る光景を
上から眺めてると足がすくむ。

「城ケ崎ブルース」の歌碑があり、
なぜか3番だけだ。
一度は思いとどまったが
しょうがない、いっちゃうかー。

♪ 愛してくれた 小指の爪を
  そっとかたみに
  つつんで入れた
  ハンカチ白い 城ケ崎
  あなたが帰る 遠笠山が
  涙にかすむ 夜のはて ♪
   (作詞:星野哲郎)

この曲は1968年のリリース。
地元の観光協会がレコード会社に
依頼して制作された。

相模湾を臨む東伊豆の城ケ崎から
西伊豆方面へ移動。
ランチは待望の高足蟹が
駿河湾を臨む戸田(へだ)で
待っているが、その前に達磨山へ。

あいにくの富士山は麓だけ。
頂上を見ること叶わなかった。
まっ、夏場はかすむから
高所に上っても遠望はムリだネ。
さァ、昼めし、昼めし、高足蟹!

「ホテル 志なよし」
 静岡県賀茂郡東伊豆町
 奈良本983-1
 0557-23-2260

2025年8月7日木曜日

第3857話 細うでの舞台は 熱川だった!

熱川温泉に到着し、
「ホテル 志なよし」に投宿。
蒲団を並べれば8人は
眠れそうな大部屋に独りだ。

かき氷は食べないけれど
2階に設置された、
かき氷サービスコーナーに
出向いたら古い新聞の切り抜き。

1970年にオンエアされた、
TV番組「細うで繁盛記」を
論じていて観たことはないが
新珠美千代をイビる、
富士真奈美の決めゼリフ、
「ちょっくら加代!
 おみゃ~の出る幕じゃあ
 にゃ~ズラよ!」
コレはよく耳にした。

驚いたのは温泉旅館の舞台が
この熱川だったこと。
さっそく晩めし前に
旅館街を歩きめぐる。

スゴいとこだネ、此処は!
あちこちに温泉が噴出している。
流れる川の水も熱く、
熱川の名前はここからだ。

18時に夕食が始まった。
温泉旅館のご多分にもれず、
すさまじい量の料理が
卓上にところ狭し。
誰がこんなに食うんだい?

食うのも大変だが書くのも厄介。
よって主な料理だけにしておく。
献立はトロ箱プランと来たもんだ。

刺身ー伊勢海老・鮑・
   真鯛・鯵・まぐろ
酢物ー鯵南蛮漬
焼物ーバサ(亜細亜ナマズ)照焼
煮物ー金目鯛姿煮
  ほかに10品ほど

頑張った。
でも、だいぶ残した。
金目なんか半分もイカない。
白飯・味噌椀・デザートはパス。
中瓶1本と中生2杯は飲んだ。

接客はネパール娘のロジーナ。
なかなか好いコで
細かいところにも気働きが及ぶ。
久しぶりの日本旅館だが
スタッフと客との気脈が通じ、
タマにはいいもんだネ。

温泉は明朝にして夜の町に出る。
先刻、目星をつけておいた、
スナック「ブーケ」へ。
46歳のママ独りの切盛りだ。
なかなか可愛い人で
熱川も捨てたもんじゃないねェ。

23時くらいまで居たのかな?
4本の中瓶を飲んじまいやした。

「Bouquet(ブーケ)」
 静岡県賀茂郡東伊豆町
 奈良本984-4
 090-9268-0087

2025年8月6日水曜日

第3856話 鰻のあとの大社と御用邸

衝動的に申し込んだツアー第3弾。
今回の行く先は
伊豆グルメと熱川温泉2日間。
三島うなぎ・高足蟹・
伊勢海老・金目鯛が味わえる。

J.C.の狙いは何と云っても
世界最大の蟹、高足蟹で
他は無くても構いません。

朝8時半に東京駅に集合し、
特急 踊り子で1時間ちょっと。
神奈川県・湯河原駅前で
バスに乗り込んだ。

到着したのは「割烹 御殿川」。
ずいぶん立派な建物で
国道136号線沿い。
東側を御殿川が流れている。

三島うなぎを味わうとの
キャッチフレーズで
JR三島駅から3kmほど南だ。
団体用の大部屋に通され、
食事がスタート。

あれえ、誰も飲みものを
注文せず、総勢19人中、
ビールを発注したのは
われ独りの有様である。

重箱の蓋を開けると鰻クン。
上半身半分に下半身丸々、
4分の3尾が横たわっていた。

あまり期待しなかったが
一箸入れて深く頷いた。
蒸しも焼きもタレの塩梅も
高水準に到達している。
さすがに三島の鰻であった。

吸い物に肝は無く、
あさり2個・三つ葉・焼き麩。
香の物は出来合いで
しば漬けとつぼ漬けたくあん。
独りで飲み続けるのも何だから
中瓶1本にとどめた、
周りに気を遣うJ.C.なのでした。

三島大社へ。
20年ぶりくらいになるかな。
お参りもそこそこに
境内の神鹿園にまっしぐら。

奈良の鹿みたいに
放し飼いではないが
人によくなついており、
金網越しに餌をねだる。
インバウンドの少女が
煎餅だかパンだか与えていた。

沼津に移動し、御用邸記念公園。
明治26年に大正天皇のため、
造営された御用邸は
昭和44年に制度が廃止され、
都市公園として一般公開された。

人の棲んだ所を見ても
心に響くものとて無し。
ここでもすぐ外に出て
黒松林を散策し、駿河湾を臨む。
この林は三島の翌年に
来た記憶がある。

バスは伊勢海老と金目鯛の待つ、
熱川温泉へ走り続けています。

「割烹 御殿川」
 静岡県三島市梅名477-8
 055-977-6234

2025年8月5日火曜日

第3855話 足立区・綾瀬に 二人のかあちゃん

足立区の東のはずれ綾瀬に
「立ち呑み処 かあちゃん」なる、
酒場があり、明るいうちから
地元の呑兵衛で賑わっている。
J.C.も何度か利用させて貰った。

この街にはもう1軒、
「かあちゃん」があって
二人のかあちゃんがいるのだ。
存在は認知していたものの、
初めて二人目の引き戸を引いた。

コの字カウンターに
テーブル席が2卓。
カウンターに促される。
ランチタイムは
昼めし派が主流だが
昼飲み派もちらほら。

ドライの中瓶に
ハンバーグ定食のハンバーグを
単品でお願いした。
たっぷりかかったソースは
ケチャップ多めのデミグラス。

繊キャベが添えられて来たが
温かい料理には
温かい付合せが望ましい。
トンカツはじめ揚げ物なら
キャベツで問題ないけどネ。
強めのレモンサワーを貰い、
勘定は1560円也。

翌週、ウラを返す。
中瓶と此度は玉ねぎフライを。
串カツでビールを飲むのは
大きな歓びなんだが
豚肉そのものより
玉ねぎのほうが嬉しいくらい。
よって関西風の串揚げは好まず、
東京風串カツ一本槍である。

生搾りレモンサワーと
玉子焼きを追加した。
玉子焼きは塩・醤油・砂糖の三択。
迷わずお砂糖でお願い。

図らずも玉ねぎフライと玉子焼き。
玉玉コンビの結成を見た。
途中からウスターソースで
食べるのが好きなんだが
卓上には中濃のみ。
まっ、いいか。

本日の会計は1660円也。
ふと思い立ってオネバさんに
二人のかあちゃんの関係を
訊ねてみた。

もともと同経営だったが
先代社長が亡くなり、
たもとを分かつことに
なってしまったそうだ。
「ふ~ん、喧嘩別れだネ?」
「いいえ、トンデもない、
 喧嘩なんかしてまっせん!」
きっぱり言われちゃいやした。

「かあちゃん」
 東京都足立区綾瀬2-26-1
 03-6662-4333

2025年8月4日月曜日

第3854話 渥美清と美空ひばり

現在、神保町シアターは
終戦80年 映画で振り返る
「戦後」を生きるということ
何が言いたいのか
よく判らない特集を開催中。

全16本のうち観たのは2本。
小津安二郎の3本をはじめ、
既視の作品が多いためだ。
1本目は渥美清主演、
「おかしな奴」。

1963年、東映の製作で
監督は沢島忠。
美空ひばり母娘に慕われ、
錦之助の一心太助シリーズ、
鶴田浩二の人生劇場が代表作。
共演は三田佳子、南田洋子、
佐藤慶、田中邦衛の面々。

落語家・三代目三遊亭歌笑の
実話に基づいており、
寅さんシリーズが始まる6年も
前ながら渥美のおかしみは
すでに群を抜いている。

三田佳子もさることながら
南田洋子の美しさと言ったらない。
昔の女優サンは本当に綺麗だった。
左幸子との取っ組み合いが
話題となった「幕末太陽傳」が
つとに有名だが
J.C.的には本作が一番好きだ。
TV好きなら ’70年、
連続テレビ小説「虹」だろう。

「悲しき口笛」は
1949年松竹の作品で
監督が家城巳代治。
代表作は「路傍の石」。
美空ひばりのシングルレコード、
A面デビュー作にして
初主演映画でもある。

戦争で生き別れになった、
兄役の原保美が懐かしい。
NHKのTVドラマ「事件記者」で
新聞社4社が入り乱れる中、
東京日報の記者、
麻薬のベーさんが印象に残る。

これから上映される作品で
オススメは小津の「東京物語」、
成瀬巳喜男の「浮雲」だろうか。
8月16日からは
よみがえる 田宮二郎
が始まります。

2025年8月1日金曜日

第3853話 多摩川渡り 川崎の街

「しなのや」を出てぶ~らぶら。
狭いなァ、町歩きは5分で終了。
矢口渡にでも行ってみるかー。
いや、猛暑日にそりゃ無謀だ。

同じ大田区の隣り町より、
神奈川県・川崎のほうが近い。
第一京浜国道を南下し、
多摩川を六郷橋で渡った。

川の水はチョロチョロ。
アザラシのタマちゃんは
何だってこんな窮屈な所に
迷い込んで来たのかな?

ソープ街・堀之内を過ぎる。
川崎随一の商店街、
銀柳街を突き抜け、
新川通りを横断した。
この先は映画の街、
チネチッタだ。

J.C.的には街で一番好きな店、
中華「成喜」に到着。
あれは5年前、名古屋からの帰途。
昼に静岡県・掛川でうなぎを食べ、
夕暮れには川崎で下車し、
此処で晩酌を楽しんだ。

いつの間にやら注文が
タッチパネル方式になっている。
QRコードよりはマシだけど
「成喜」よ、お前もか!
その感、否めず。

さっき大瓶を飲んだので
紹興酒にしてみた。
普段は常温のところを
暑さのせいでロックにした。
つまみは小皿の蒸し鶏だけ。
カツカレーのあとじゃ、
あんまり食えないからネ。

お運びのおばちゃんに訊く。
「中国酒の五加皮(ウカピ)、
 なかったっけ?」
「エ~ッ! ええっと、
 あった、ありましたねェ。
 ずっと、大昔にねェ」
「そんな昔じゃないヨ。
 つい5年前だヨ」
「あら、そうだったかしら?
 あれは廃止しちゃいました」
「廃止でっか?」
「ごめんなさいねェ!」

五加皮は白酒に山菜のウコギを
漬け込んだ酒で53度もあり、
国内ではゴカヒシュと呼ばれる。
5年前はソーダ割りを飲んだ。

紹興酒を1杯でやめ、
ビールが好きなんだねェ。
ハートランド中瓶をゴクゴク。
さぁ、あとは鶴見辺りかな?
いや、蒲田に戻る手もあるネ。

「成喜」
 神奈川県川崎市川崎区小川町2-11
 044-244-4888

2025年7月31日木曜日

第3852話 東京の 南のはずれ 六郷土手 (その2)

京急・六郷土手の改札を出て
並行する JRの線路を目指す。
この高架下にひっそりと
店を構えるのが「しなのや」。
信濃生まれとしては
一度行っときたい店だった。

入口のひっそり感とは裏腹に
店内はそこそこ広く、
カウンターとテーブル席に加え、
小上りまで配備されていた。

「こんにちわ!こちらへどうぞ」
お運びの娘さんが明るく元気。
速やかに二人掛けのテーブルへ。

ランチメニューがズラリ。
例によって当方は飯よりも酒。
ドライ大瓶を通しながら
彼女につまみメニューを訊ねると
「すみませ~ん!
 お昼は定食だけなんです」
「あっそう、ちょっと待ってネ」
「本当に申し訳ないです」
「いや、いいの、いいの」
いいコだなァ。
いいお嫁さんになれるヨ。

1枚の貼り紙に目がとまる。
開業 昭和五十二年
地名 六郷番外地
屋号 しなのや
開業は「青い滑走路」の2年後で
此処は番外地だったが今は
箸袋に六郷土手駅前通りとある。

刺身・天ぷら・トンカツ・
焼き肉・焼き魚などなど。
本日の日替わり定食に
カミカツカレーがあった。
カミカツは薄いトンカツで
J.C.は子どもの頃から好き。
ライス半分でお願いした。

くだんのいいコが
「小鉢とかお新香とか、
 先にお持ちしましょうか?」
どこまでいいコなんだ、
このコは!

昆布佃煮・しば漬け・
ケチャスパが卓に並ぶ。
大瓶を半分飲んで
残りをカミカツ用にとっておく。

わかめ味噌汁・キャベツサラダを
従えてカツカレーが運ばれた。
あちゃ~! カレーがカツに
ブッカかっちゃってるヨ。
せめて半身には
かけないで欲しかった。
ソースで食べたいからネ。

まずまず美味しくいただいて
お勘定は1650円也。
「どうもごちそうさま」
「ありがとうございます。
 またお待ちていま~す」
孫息子でもいりゃあ、
嫁に貰ってやるんだがなァ。

「しなのや」
 東京都大田区西六郷4-17
 03-3739-4211

2025年7月30日水曜日

第3851話 東京の 南のはずれ 六郷土手 (その1)

今日の舞台は東京の南のはずれ。
大田区・六郷土手である。
実際に東京の南の果ては
羽田空港・D 滑走路なんだが
一般人は立ち入り禁止。
おっと、裕次郎が歌い出したヨ。

♪ あゝ白い翼が走る
  あゝ青い滑走路
  俺をうらんで
  旅立つおまえ
  すがりつくよな
  まなざしを
  抱いてもやれない
  男のこの愛
  つらいのさ
  夜霧の空港
  濡れてかすむよ ♪
  (作詞:池田充男)

「青い滑走路」は
1975年のリリース。
作詞・池田充男、作曲・鶴岡雅義。
大ヒット曲「二人の世界」と
同じコンビで当然のように
鶴岡のレキントギターが響き渡る。
五月蠅い浪花の小姑も
さすがにご存じあるまいて。

裕次郎ナンバーとしては
ユニークな曲調で
伊集加代子のスキャットが
とても印象的。
好きな曲だから
酔っぱらうと歌ったりもする。

それはそれとして六郷土手は
京浜急行で蒲田の二つ先。
蒲田はむろんのことに
一つ先の雑色には
ときどき出没している。

ところが六郷土手は
20年ぶりじゃなかろうか。
むしろ一駅飛ばして
京急川崎に行くほうが多い。
急行が停まるしネ。

昔はのどかだったが
車の通行量も増えて
佇まいが町らしくなってきた。
そりゃ、そうだろう。
20年といったらふた昔だもの。

=つづく=

2025年7月29日火曜日

第3850話 浅草で 蛍と車子と 北寄貝 (その2)

浅草は観音通りの「志婦や」。
生ビールを飲みながら
壁の品書きを目で追っていた。
おっと車子があるじゃないかー。

正しい漢字の蝦蛄ではなく、
車子と明記されているのは
蝦蛄と書いたら
読めない人がいるからかな?

小ぶりながらも旨みじゅうぶん。
おそらく瀬戸内産だろう。
たっぷり添えられた本わさびに
当店の矜持を見る思いがした。

菊正のぬる燗に切り替え、
北寄貝刺しを追加。
普段は上燗を飲むが
何せこの暑さだ。
菊正の冷酒があればいいけど
あいにく冷たいのは他の銘柄。

身の厚い北寄貝が一しきり、
舌の上に涼風を吹かせる。
以前は軽く湯通しして
ほんのりピンクの部分も
散見されたが今日は完生状態。

赤貝・ミル貝・鳥貝・石垣貝。
こういう貝の仲間は大好物。
いずれ劣らず柔らかいのに
ほのかなコリコリ感が好もしい。

しばらく来ないうちに
店の人たちも年齢を重ねた。
久しぶりに大将と言葉を交わす。

「懐かしく女将さんのお顔を
 拝見したヨ。
 最近はお店に出てるんだネ」
「ええ、そうなんですヨ」
いつもお腹が大きかったり、
赤ん坊をおんぶしていた彼女は
なかなかの美人である。

先代の未亡人、大女将が
今も元気に立ち働いている。
この人は焼き物担当。
「お母さんもお元気そうで」
「ええ、おかげ様で」

この翌日。
前日の「神谷バー」で
お替わりしかかった蛍烏賊が
また恋しくなって再訪。
すると、バーの入口で
「志婦や」の大女将とバッタリ。
二人して偶然に驚いたのでした。

「志婦や」
 東京都台東区浅草1-1-6
 03-3841-5612

2025年7月28日月曜日

第3849話 浅草で 蛍と車子と 北寄貝 (その1)

週末には来ちゃイケナい浅草に
足を踏み入れてしまった日曜日。
近くの三ノ輪で所用を済ませ、
観光客とインバウンドの情勢が
気になり、立ち寄ってしまった。

いやはや、スゴいのなんのっ!
後悔したがあとの祭り。
仲見世も新仲見世も
芋の子を洗うが如し。
自分も芋の子の1つに
過ぎないのではあるけんど。

行きつけの「神谷バー」へ。
此処もヒドかった。
百人は入れそうなフロアで
席を見つけるのに四苦八苦。
どうにかスペースを探し当て
滑り込みセーフとなった。

荷物を持つ習慣のないJ.C.、
虎の子の席に
ポケットティッシュを置いて
レジに向かった。
当バーは食券制なのだ。

ビヤホールで瓶もないもんだが
いつものようにドライ大瓶と
電氣ブラン・オールドを購入。
そしてこれまたいつものように
串カツにいきかけたが
サンプルケースに
蛍烏賊沖漬けを見とめた。
うん、試してみよう。

するとこれが大当たり。
7尾の小粒にミッシリと
ワタが詰まって味わい深く、
何よりも食感が素晴らしい。

今までいろんな烏賊を
食してきた我が人生において
3本の指に入るほどの美味さ。
お替わりしかかって
思いとどまったくらいだ。

さて、2軒目。
長いこと無沙汰している、
「志婦や」におジャマしよう。
かつてはひんぱんに訪れたが
ある時期を境にパッタリと
姿を見せなくなったのには
ワケがある。

こよなく愛するビールが
生も瓶もキリンだけなのだ。
アサヒの地元で
わざわざキリンを売るのには
何かしがらみがあるのだろう。

キリンも最近は
飲み易くなったこともあり、
生をお願いした。

=つづく=

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

2025年7月25日金曜日

第3848話 後輩が あのニラレバを 食べたがり

都立板橋高校の後輩・N々、
彼女の旦那のトモと一緒に
町屋「山三」で飲んだのは
去年1月のこと。

その際に食べたレバニラを
N々がことのほか気に入り、
美味しさが忘れられなくて
また食べたいと言う。

イイ女が何でまたレバニラ?
首を傾げたくもなるが
或る週末、再び3人で訪れた。
早めに16時半スタートだ。

N々とは土曜に飲むことが多い。
「山三」は土日通し営業につき、
使い勝手がよろしい。
J.C.、瓶ビール、
彼女、レモンサワー、
旦那、ハイボール、
グラスを合わせた。

注文方法は去年の暮れから
 QRコードに変わった。
J.C.が忌み嫌うヤツで
若い彼らに任せっきり。

まずレバニラを2人前。
リストアップされた刺身から
2種択ぶ盛合わせが可能。
平目とシマアジをチョイス。
それをもう一度活用して
ダツとオジサンをー。

平目とシマアジは誰もがご存じ。
それじゃダツ(駄津)とは?
サヨリを大型にした魚形で
上下のアゴが突き出ている。
焼き霜造りで来た。

オジサンは色が赤いから
オジサンと言うより、
オバサンが似つかわしいが
2本のヒゲが特徴的。

これはウミヒゴイ(海緋鯉)属。
ヒメジの仲間である。
仏語でルジェと呼ばれ、
仏料理では珍重される、
美味しいサカナだ。
20年も以前に旅先の
山口県・萩で食べたが
当地の名産とされている。

赤ジソのまち子サワーや
生ホッピーなどいろいろ飲んだ。
夫婦はフライドポテトを
お替わりしてやがる。
芋夫婦にも困ったもんだ。

彼らの締めは海胆&いくら丼。
J.C.はドライの大瓶に戻り、
有明海のマテ貝を
アテ貝としたのでした。

「山三」
 東京都荒川区町屋2-4-10
 050-5571-7522

2025年7月24日木曜日

第3847話 カニピラフを食ったんだガニ (その2)

”わが家のテッパン” である。
コレはあられの詰合わせで
新潟市・三幸製菓の製造。
カラフルな袋に入っている。

顔ぶれは
黒豆あられ・いか豆・
辛いか天すなっく・
のり塩すなっく・えびあられ・
チーズすなっく・梅塩揚げ
以上、7種類。

小袋入りの柿ピーは
たびたびお目に掛かるが
ここまで立派なのは前代未聞だ。
有難くビールの友とした。

カニピラフの前に
1枚から注文できる生ハムを。
仏のジャンボン・クリュ、
西のハモン・セラーノ、
1枚づつ食べ比べた。
なかなか気が利いている。

そうして主役の登場。
なるほどタラバ蟹タップリだ。
コールスローが添えられ、
味噌椀はかき玉汁。

うん、うん、蟹好きを
満足させるだけのものはある。
でもネ、何と言おうかな?
今一つパンチに欠けるんだ。
味付けがサラリとし過ぎて
物足りなさを残す。
それでも美味しくいただいた。

高級店につき、
OL・リーマンの姿はない。
男は中年以上、女はオバ様族。
幼児を連れた若夫婦が1組。
身なりからして裕福そうだ。
ピープル・ウォッチングも
そこそこに、会計は 3460円也。

目の前のバス停には
2分で池袋行きが来る。
下板橋からけっこう歩いたし、
7月の陽射しも強い。

バスに乗って池袋西口着。
じきに居酒屋「三福」が開く。
そうだ、名物の食用ひょうたんで
大瓶1本にとどめたビールの
飲み直しとまいりましょう。

「レストラン オオタニ」
 東京都板橋区前野町47-8
 03-3959-5040

2025年7月23日水曜日

第3846話 カニピラフを食ったんだガニ (その1)

蟹炒飯かカニピラフが
無性に食べたくなった。
かにカレーは何てったって
愛と奇跡の親がにカレー。
おかげで幸せな日々である。

蟹炒飯は北上野「栄来軒」で
いただくことが多い。
紛れもなく当店が
東京一と確信しているもんで。

「栄来軒」へ来れば、
ほとんど蟹炒飯一本やり。
三ヶ月に一度くらいは
おジャマしている。

そこで今回はどうしても
カニピラフという気になった。
様々なデータを駆使して
行き着いたのは
「レストラン オオタニ」。
店のメニューに
カニピラフ(タラバ蟹たっぷり)
コレを見つけて即断した。

所在地は板橋区・熊野町。
川越街道に面しており、
バスはひんぱんに来るが
駅からかなり遠い。

東武東上線・大山が最寄りで
それでも徒歩10分ほど。
一つ池袋寄りの下板橋から
散歩を兼ねて歩くこと30分。
汗ばみながら到着した。

1階に厨房とキャッシャー。
客は2階に通される。
広々として天井が高く、
いかにもレストランといった、
風格に満ちていた。

レストランには極めて珍しく、
ビールがスーパードライ大瓶。
こういう場所は中瓶どころか
小瓶が幅を利かせるものだ。

一緒にサーヴされたのは
”わが家のテッパン”
7種の本命ミックス!
”本命” にテッパンのルビが
振られている。

謎めくカラフルな小袋入りは
次話で説明いたします。

=つづく=

2025年7月22日火曜日

第3845話 愛と奇跡の親がにカレー

ちょいと以前の話になるが
板橋区・仲宿商店街のスーパーで
珍しいレトルトカレーに遭遇。
愛と奇跡の親がにカレーという。

かにのカレーと来たかァ・・・
無類の蟹好きとしては
看過できるハズがない。
即刻、買い求めた。

その夜、食するととても美味い。
すっかり気に入ってしまい、
翌週、舞い戻ったら消えている。
セールが終了した模様だ。

棄てずに取っておいた、
空き箱をしげしげと眺める。
文言が心に訴えかけてくる。
読者の方々にも見て貰いたく、
かなり長いが紹介したい。

=深海よりも深い神秘の物語=
「あなたに逢いたい・・」
Tottori Iwami

愛と奇跡の親がにカレー
親ガニとは
ズワイガニのメスである
繁殖期になると
オスとどこかの水深域で出逢い
新たな命を育みます

濃厚な旨味とコクが絶妙
外子・内子・かに身・かにみそ・
煮込みスープがマッチ!

鳥取県産親ガニ(セコガニ)と
岩美町産白ねぎを丸ごと
煮込んだ贅沢スープをブレンド

愛と奇跡3つの物語
① 親ガニの生息水域は
  水深250m付近なのに対し、
  松葉ガニは250m~1200mと
  広範囲でより深いため、
  オスとメスの出逢いはまるで
  奇跡だとも言われています
② 親ガニは生涯 5~6回の産卵を
  しますが交尾は生涯で
  1~2回しかなく
  奇跡の出逢いでオスから
  受け取った精子をメスが
  大切に貯蔵し産卵の度に
  使うのだそうです
  何と神秘的な生態でしょう 
③ 親ガニは約6万粒の卵を
  孵化するまで1年間ずっと
  お腹に抱えっぱなしです
  そして孵化が終わるや否や
  産卵し卵を抱えて過ごすという
  サイクルを繰り返し
  生涯を終えます
  このような健気で
  深海よりも深い愛がなければ
    松葉ガニも産まれないのです

そんな愛と奇跡の親ガニに
敬意を払い丸ごと活かした
カレーに調理しました

何だかカニが愛しくなって
販売先から10個取り寄せました。
大事に、大切に、食べています。

「道の駅きなんせ岩美」
 鳥取県岩美郡岩美町新井337-4
 0857-73-5155

2025年7月21日月曜日

第3844話 ♪ あの素晴しいタイをもう一度 ♪


♪  命かけてと誓った日から
   すてきな思い出 
     残してきたのに
     あの時同じ花を見て
     美しいと言った二人の
     心と心が今はもう通わない
     あの素晴しい愛をもう一度
     あの素晴しい愛をもう一度 ♪
   (作詞:北山修)

加藤和彦と北山修のデュオは
1971年4月のリリース。
あの時 J.C.は弱冠19歳。
ドイツからイタリアへと
一人旅を満喫していた。

それはそれとして
この曲を持ち出したのは
素晴しい愛をもう一度ならぬ、
タイをもう一度満喫したからだ。

あれは2年前の6月。
本郷三丁目の「ガパオ専門店」を
短期間に何度も訪れた。
亡きのみとも・O野チャンと
飲み会を催したりもした。

店主は20代のタイ女性・ニタ。
彼女の母・アンナが
バンコクから来るってん
一夜、ディナーをともにした。
その縁で彼女鎌倉に
案内することになったりもー。

アンナがまた来日するという。
たまたま、のみとも・ハカセと
酌交する機会があり、
会場をそのタイ料理屋に設定。
ただし、本郷店は週末休業。
落ち合ったのは浅草橋の姉妹店、
「ガパオカオゲーン」だ。
カオゲーンは屋台めしのこと。

土曜17時、小宴会が幕を開けた。
娘もテーブルに着き、
座り飲み状態の四人体制。
乾杯はみんなグラス生だが
J.C.は1Lの超ロング・ジョッキ。
いや、飲み出があったぞなもし。

お通しは春雨のヤムウンセン。
そしてニタが考案した新商品、
スーパーパクチー・トムヤムクン。
海老とパクチーの鍋仕立てである。

ソムタム(青パパイヤ)サラダ、
ゲーンキョー(グリーンカレー)、
小松菜のナンプラー炒めを
つまみながら飲みに飲んだ。

タイ・ウイスキーのメコン・ハイ。
イギリスのジンジャー・ジン。
J.C.は例により、ビールに戻って
タイの誇る三大ビール、
シンハ(ライオン)レオ(豹)
チャーン(象)を全制覇。
そんなこんなで
会計時には目ン玉が四つ、
飛び出ましたとサ、やれやれ。

「ガパオガオゲーン」
 東京都台東区浅草橋5-5-7
 03-5829-4014 

2025年7月18日金曜日

第3843話 あのヒラタで 仔牛三昧 (その3)

そうして本日の締めくくり。
セコンド・ピアットは
サルティンボッカだ。
ローマを代表する料理がコレ。
意味は "口に飛び込む"である。

プロシュート(生ハム)で
仔牛ロースを巻き込み、
サルヴィア(セージ)を
あしらってソテーする。

ところが好事魔多し。
最後に落とし穴が待っていた。
ヤケにしょっぱい。
プロシュート過多により、
塩気が強烈なのだ。

火も通り過ぎて硬い。
せっかくの好物・仔牛を
1/4ほど残してしまった。
Mきサンも J.C.に倣い、残す。

自家製リモンチェッロと
エスプレッソでチェーナは終了。
くだんのカメリエーレに
トンナートは花マルだけど
サルティンボッカが残念と
しっかっり伝えた。

そうしてイル・コント(会計)。
するとカメちゃん曰く、
「サルティンボッカは
 お引きしておきました」
「エッ? そんなこと
 してくれなくていいの」
あらためて加算させ、お支払い。

帰ってゆくわれわれを
カメちゃんが見送ってくれる。
そこへクッチーナ(厨房)から
シェフがお出ましだ。
「ご指摘、本当に
 ありがとうございました」

いいねェ、いいですねェ。
J.C.はこういう人が好き。
中にはヘソを曲げて
(フン、素人に何が判る!)
心の内で悪態をつく料理人が
居ないこともない。

今の世の中、素直に頭を
下げることの出来る人は貴重。
久しぶりの訪れだったが
近いうちにまたおジャマしよう。

すぐ近くの広場にある、
童謡「赤い靴」のモデル、
きみちゃんの像に立ち寄り、
やさしく頭を撫でた。
スッキリ晴れやかな気持ちで
夜の十番から六本木へと
芋洗坂を上がって往きました。

「ヴィノ ヒラタ」
 東京都港区麻布十番2-13-10
 遠藤ビル2F
 03-3456-4744

2025年7月17日木曜日

第3842話 あのヒラタで 仔牛三昧 (その2)

麻布十番「ヴィノ ヒラタ」。
道往く人々を眺めながら
楽しむチェーナ(夕食)は
上々の滑り出しを見せた。

パーネがバスケットに
てんこ盛りで運ばれる。
おい、おい、こんなに
食べ切れないヨ。

グリッシーニ・フォカッチャ・
ゼッポリーニ・クロワッサン・
バゲットに、何というのかな、
真ん中に緑のオリーヴが
詰まったヤツまでー。
いずれも焼き上がりよろしく
オリーヴ油を必要としない。

仔牛の冷製・ツナソースが
出色の出来であった。
何でまた仔牛にツナ缶の
ソースなのか不思議だが
これは北イタリアの名物料理。
ピエモンテとロンバルディアの
境界辺りが発祥の地である。

肉系に魚介系を合わせるのは
イタリアでも非常に珍しく、
肉を茹でるのも極めて稀、
禁忌の重ね着がこの料理なのだ。

仔牛に目の無い J.C.は大好きで
NY時代は実によく食べた。
ヴィテッロ・トンナート。
イタリア語ではそう称する。

トンナートは
ツナ缶にアンチョヴィと
マヨネーズを合わせたもので
早い話がツナマヨだが驚きの美味。
ちなみにマグロの伊語がトン。

シャコのスパゲッティも好かった。
シャコもまた大好物だからネ。
産地を訊き忘れたが
おそらく瀬戸内と思われる。
6尾ほどのシャコに加え、
フレッシュのフルーツトマトと
バジルの葉があしらわれる。

さて、さて、注文の後半戦。
仔牛ラグーのパッパルデッレ
仔牛のサルティンボッカ
何とまあ、仔牛三昧と来たもんだ。

リボン状のパッパルデッレは
パスタの中で最も幅広。
歯応えがかなりあるために
魚介では負けてしまうので
十中八九、肉のラグーが使われる。
しかし、挽き肉になると、
仔牛の繊細さが薄れる気がした。

=つづく=

2025年7月16日水曜日

第3841話  あのヒラタで 仔牛三昧(その1)

あのヒラタ、といっても
三元豚で有名な「平田牧場」では
ございやせん。
港区・麻布十番で
イタリアンの最高峰に君臨する、
「ヒラタ」のことであります。

そばとも・MきサンのBDイヴ。
おめでたい日の前夜を
祝うのに日本そばじゃ、
あんまりなので箸をフォークに
持ち替えることと相成った。

遠藤ビルの3階が
「クッチーナ・ヒラタ」。
2階はよりカジュアルな
「ヴィノ・ヒラタ」。
今回は2階を予約し、
その窓際に案内された。
店一番の特等席である。

来る前に近所の立ち飲み酒場で
ビールをしっかり飲んで来た。
よってさっそくの赤ワインは
プロデュットリ・デル・
バルバレスコ '19
テイスティングの段階で
華やかに香った。

カメリエーレ(接客係)が
「アレルギーのあるものは
 ございますか?」
J.C.、即座に応えて
「性格の悪いウエイターくん!」
「それなら大丈夫です。
 お任せ下さい!」
大人しそうに見えたニイさんが
張った胸をポンとたたいた。
おう、頼もしいじゃないかー。
人は見掛けによらないネ。

赤のグラスを合わせる。
相方の頬が緩み、笑みがこぼれた。
そうでしょうとも。
NY時代に何度も飲んだ、
気に入りの造り手ですもの。

途中の腹具合を見る意味もあって
発注を前後半に分ける。
前半は
吉田牧場の焼きカチョカヴァッロ
仏産仔牛モモ肉 ツナソース添え
シャコとトマトのスパゲッティ

カチョカヴァッロは好きなチーズ。
馬のチーズを意味するこれは
もともとソレント原産だが
現在は南イタリア全域で作られ、
人々に愛されている。

湯で練り込んで整形し、
紐で吊り下げて熟成させ、
瓢箪に似た形に仕上げる。
その形が馬の鞍にぶら下がる、
振り分け袋に見えるため、
こう呼ばれるようになった。

=つづく=

2025年7月15日火曜日

第3840話 メンチカツは 忘却の彼方に (その2)

「そのだ」の客たちは
昼めし・昼飲みが半々。
黒ラベル大瓶を通す。
メニューの★付き赤字
当店のオススメである。

★牛ハラミタタキを所望した。
和牛ではなかろうが
それなりの期待はある。
何せ、わざわざ★マーク
付いてるんだからネ。

ステンレスの小皿に
ヒタヒタのたれはポン酢風。
小さめ薄めのスライスが8切れ、
スイスイと泳いでいた。

1切れをパクリ、ヤケに硬いな。
牛肉の旨みもイマイチだ。
これはを外した上で
赤字から黒字に戻すべし。

ビールのお替わりも
つまみの追注も断念した。
会計は1518円と関西系だけに
1円台までしっかり徴収。
同じ上方からの進出なら
有楽町は交通会館地下、
「徳田酒店」の方がずっと好い。

五反田駅構内の鮮魚店、
「sakana bacca」に立ち寄る。
晩酌のつまみを調達するためだ。
平目刺身とスマにぎりを購入。
どちらも素晴らしかった。

プリプリ平目は明らかに朝締め。
エンガワもタップリ。
スマは別名・ヤイト。
シマガツオ、トロガツオとも。
誰もが認める究極の美味である。

山手線内回りに乗り、御徒町へ。
行きつけの「味の笛」で
目当ては工場直送のドライ生だ。
開店直後の15時5分に入店。

十全なすの季節が始まっていた。
この浅漬けを見過ごす手はない。
先客も後客もこぞって十全、十全。
うむ、生に寄り添って最高だ。

この茄子は昭和の初め、
泉州水茄子と新潟の在来種を
掛け合わせて作られた。
J.C.は水茄子も好きだが
パリッとした皮を持つ、
十全茄子をより好む。
日本一の茄子はコレである。

麒麟山の冷たいのを追注した。
越後の茄子には越後の酒だ。
若くして摘み取られ、
口福をもたらしてくれた、
十全の供養にもなりましょう。

「スタンド そのだ 五反田店」
 東京都品川区東五反田1-15-5
 03-5422-7950

「sakana bacca」
 東京都品川区東五反田1-26-2
 03-6456-2470

「味の笛 本店」
 東京都台東区上野5-27-5
 03-3837-5828

2025年7月14日月曜日

第3839話 メンチカツは 忘却の彼方に (その1)

東京の品川区・五反田に
知る人ぞ知る洋食店がある。
「スワチカ」はカウンターのみ。
たった8席の小体な店だ。

ふと思い出して久々に訪れた。
2008年5月以来だから
17年ぶりである。
その節はタイトルロール、
スワチカランチをいただいた。

お皿にメンチカツ1個。
キャベ繊・ポテサラ・ライスが
一緒盛りになっており、
そこは覚えちゃいるけど
肝心の味は忘却の彼方なり。

幸い行列もなくすんなり座れた。
初老のご夫婦の切盛りで
見覚えがないけれど
この二人のほか考えられない。

ドライの中瓶をお願いし、
前回同様スワチカランチを
ライス半分で通した。
前述のメインプレートのほか、
具沢山の豚汁と
きゅうりのキューちゃんが
ホンのチョッピリ。

周りを見ていたら
スワチカランチ、メンチカツ定食、
メンチカツカレーが大人気。
み~んなメンチがらみである。

さすがに名物だから美味しいが
J.C.は世界で一番のメンチカツ、
浅草「ニュー王将」のそれを
幾度も食べているからネ。
お勘定は1780円也。
ごちそうさまでした。

食べ足りてはいても飲み足りない。
目黒川を渡り返して
「大衆食堂スタンド そのだ」へ。
兵庫県・神戸市から進出して来た、
関西の人気食堂である。
此処にも行列はなく、
カウンター奥に着席した。

=つづく=

「スワチカ」
 東京都品川区西五反田1-27-6
 03-3490-2914

2025年7月11日金曜日

第3838話 福井県内 あちらこちら

旅の最終日は福井県内を
あっち行ったり、こっち来たり。
最初に訪れたのは三方五湖。
五つの湖を一望できる山頂へ。
此処でもリフトのお世話になった。
人生初のリフトが二日連続とは
一体全体、どうなってんだい!

湖はよく見えなかった。
連日の猛暑で湖水の蒸発が激しく、
大量のガスを発生させている。
三方五湖に天はミカタしなかった。

山頂のカフェ、
「レインボーライン」で一憩。
イタリアのモレッティがあって
小瓶を1本飲んだ。

例によって早めのランチは
敦賀に戻り、日本海さかな街。
強引な客引きが不評だが
実際は大したことなかった。
ネットで書き立てられ、
自重している様子が伺えた。

数十軒が軒を連ねる中、
「かに喰亭 ますよね」に決定。
ズワイせいこ蟹夫婦丼を
品書きに発見したのでネ。
ドライ中瓶とともに通す。

オスのズワイは冷たかったが
メスのせいこは茹で立て。
内子も外子もミソもタップリ。
美味しいが特筆には値しない。
一級品はタグを付けられ、
東京・名古屋・京都・大阪に
旅立ってゆくのだろう。

お次は曹洞宗の大本山、永平寺。
酒気帯び運転ならぬ、
酒気帯び参拝を禁じている。
木造の大建築の中を相当歩いた。
階段も少なくない。
はたして、ご利益はいかに?

続いて一乗谷朝倉氏遺跡。
野っ原にポツンとある遺跡は
唐門しか見るべきものがないが
堀を泳ぐ鯉たちは見もの。
餌をやる観光客がいて
鯉は押し合いへし合い状態。

亀も負けじと参加するものの、
鯉の勢いにひっくり返される。
いやはや亀も大変だ。
鯉は兎と違い、
昼寝してくれないからネ。

小松空港への道すがら。
九頭竜川を渡った。
川辺には鮎釣りの人少なからず。
水景は見る者の目を和ませる。

晩酌は空港内の「味の中石」。
野菜天ぷらときつね用油揚げで
黒ラベル中瓶を飲む。
せっかくのうどん屋につき、
小松肉うどんを食べると
これがなかなかだった。

甘く煮た牛肉入りで
ツルツルのうどんが好もしい。
さァ、このあとは
JAL機に搭乗するだけであります。

「レインボーライン」
 福井県三方郡美浜町日向75-2-6
 0770-47-1170

「かに喰亭 ますよね」
 福井県敦賀市若葉町1-1531
 0770-22-3590

「味の中石」
 石川県小松市浮柳町ヨ50
 小松空港ターミナルビル2F
 電話ナシ

2025年7月10日木曜日

第3837話 日本海の京都 (その2)

そうして見下ろした天橋立。
みなさんこぞって
股のぞきのオンパレードだ。
J.C.もマネしてみたが
何がいいのかさっぱり判らん。
普段取らない姿勢で目が回った。
体勢を立て直して見れば
さすがに麗しき日本三景なり。

夕食は福井県に戻って今庄宿へ。
「古民家レストラン らんたん」に
靴を脱いで上がり、
一人参加者は庭を臨む窓側の席。
知らぬ同士が差し向かいに
ならぬようにとの配慮かな?

すでに、うにしゃぶがセットされ、
すかさず固形燃料の着火。
ビールは珍しくドライ大瓶だ。
店長(?)の説明によると
「何でまた山ん中で海胆かと
 思われるでしょうが
 山の向こうは越前海岸なんです」
目の前の高頭山を越えれば
”哀しみ本線日本海” なのである。

海胆を溶かし込んだ出汁に
しゃぶしゃぶする食材は
大海老・生いか・赤魚・若狭牛・
焼き豆腐・わかめ・えのき茸・
しめじ・キャベツ。

J.C.は最近(でもないか?)、
流行りの和牛&生海胆のにぎりは
食べず嫌いのせいで
ただの一度も試したことがない。
山の幸と海の幸の合体は避けたい。
ところが・・・食べてビックリ。
意外と合うじゃないか!
目からウロコとはこのことである。

店長のおすすめに従い、
リゾットにしたら、またケッコウ。
福井名物の厚揚げ煮。
定番のおろし&かつ節入りそば。
この食事が旅のベストとなった。

帰宿後、今宵もすぐに外出。
昨夜同様「カメレオン食堂」へ。
実は前夜、会計の際に店主に訊ねた。
「この牡蠣は何処の牡蠣?」
「それは・・・ちょっと秘密で」
「ふ~ん・・・的矢でしょ?」
「エエ~ッ! ア、アタリです!」

立ち話ながらここから会話が弾む。
彼は元銀座のバーテンダーで
あの際コーポレーションが
バー部門を立ち上げたとき、
尽力した御仁であった。

今宵はカウンターで差し向かい。
グラスをカチンと合わせる。
I・W・ハーパー炭酸割り、
ノイリー・プラの赤と
飲み継いで締めは
マッソ・アンティコ プリミティーヴォ。
プリミティーヴォは
クロアチア原産の赤用セパージュだ。

「福井に来たら必ず立ち寄るネ」
「アテにしないで待ってます!」
固い握手で別れましたとサ。

「古民家レストラン らんたん」
 福井県南条郡南越前町今庄2字7-1
 0778-45-1710

「カメレオン食堂」
 福井県敦賀市白銀町5-29
 0770-24-3717

2025年7月9日水曜日

第3836話 日本海の京都 (その1)

敦賀を出たバスは北陸道を走り、
京都府・舞鶴に到着した。
見学先は赤れんが倉庫群だ。
これは日露戦争時の武器弾薬庫。
その跡地である。

多くの人々が引き揚げて来て
故国の土を踏んだ舞鶴港で
岸壁の母に想いを馳せたかったが
車で20分もかかるため断念。

それでも訪れた証しに
5つある倉庫の3号棟で
舞鶴海軍サイダーを飲んだ。
港には今現在、
海上自衛隊の艦船が停泊している。

バスの車窓から見ただけの
舞鶴の町の佇まいが心に残る。
かつて栄えた目抜き通りは
シャッター街と化して侘しい。

今日のランチは目前に
天橋立が横たわる「橋立大丸」。
固形燃料で温めた蒸しアワビと
ノドグロ塩焼きが二枚看板だ。

肝付きアワビはなかなかながら
小ぶりのノドグロは小骨が多く、
下手打つとこっちのノドが危ない。
ほかに尾頭付き甘海老が5本もー。

今回の旅で一番楽しみにしていた、
丹後半島は伊根の舟屋に移動。
男はつらいよシリーズ第29作、
「寅次郎 あじさいの恋」の舞台だ。

ヒロイン・いしだあゆみが
実子を預けている実家が此処。
もう一つの重要な舞台、
鎌倉のあじさい寺・成就院は
2年前にタイのレディーと歩いた。

その後、天に召された、
いしだあゆみの供養のためにも
かもめ舞う港町に来たかった。
でもネ、今は観光地化されて
舟屋の情緒はどこへやら・・・。
夢破れて山河あり。
障子破れてサンがあり。

天橋立に舞い戻る。
食事処と土産物店が軒を連ね、
観光客であふれ返っていた。
丘の上へリフトで昇る。

スキーをしない J.C.は生涯、
リフトの世話にならんと思ったが
まさか日本三景の一景で
リフト・アップされようとはー。
人生は明日何が起こるのか
皆目、見当がつきませんなァ。

「橋立大丸 シーサイドセンター」
 京都府宮津市中野430
 0772-27-1313

2025年7月8日火曜日

第3835話 初めての福井県

勝手気ままな思いつきのせいで
衝動的に予約した4つのツアー。
その第2弾は
越前若狭と丹後半島3日間。
羽田から小松に飛んだ。

空港からバスで景勝地・東尋坊へ。
此処は福井県・坂井市・三国町。
実は J.C.初めて
福井県に足を踏み入れた。
日本全国47都道県中、
残すは和歌山、徳島のみ。
2県は来春、旅する予定だ。

さて、希少な地形の東尋坊。
溶岩が冷め固まった細い割れ目は
柱状節理というそうだ。
松本清張「ゼロの焦点」の舞台、
能登金剛をイメージしたが
断崖絶壁感はさほど無かった。

土産物屋や飲食店の並ぶ通りに
「潮騒の館 やし楼」なる大店があり、
飛び込んで缶ビールを飲んだ。
ついでに一口サイズの生海胆もー。
殻付きだが本体は別物で殻は飾り。
1個700円じゃ、文句は言えない。

早めの夕食は道の駅、
越前武生(たけふ)の「丸松」。
鮮魚丸松グループの直営店で
2年前の開業はその1年後、
北陸新幹線延伸を見越してのことだ。

天ぷらや茶碗蒸しが付いて
メインはにぎり寿司。
酢めしは普通ながら
載っかる種がバカデカく10カン。
赤海老・かんぱち・サーモン・
イカ・まぐろ・たこ・ズワイ蟹・
真鯛・ツブ貝・玉子。

赤海老はアルゼンチン、
サーモンはチリ、
ツブ貝は北海道だろう。
地魚を期待していたが
団体旅行ってこんなもんサ。

ホテルは新幹線終点の敦賀駅そば。
バッグを置いて夜の街に出る。
フロントで訊ねた飲み屋街は
スナックばかりで気に染まない。

駅近くの「カメレオン食堂」に
白羽の矢を立てた。
ハートランド生、シャルドネ、
マルベックを1杯づつ飲んだ。

つまみはカキのアヒージョ。
コイツがとても好く、
店主とも妙に気が合って
翌日ウラを返すことにー。
詳細はのちほどお伝えします。

「潮騒の館 やし楼」
 福井県坂井市三国町東尋坊
 (地番は無いらしい)
 0776-82-5100

「海鮮レストラン 越前 丸松」
 福井県越前市大屋町38-5-1
 道の駅 越前たけふ 2F
 0778-42-5065