2012年2月3日金曜日

第244話 酢がきとかき酢 (その1)

牡蠣(かき)の美味しい季節である。
生がき・酢がきはもとより、
フライ・バタ焼き・グラタン・クリーム煮、
はたまた土手鍋・かき飯・かきピラフ、
どうやったって旨いんだから
この海の恵みには感謝してもしきれない。

巷(ちまた)では殻付きの生がきに
レモンを搾ったり、カクテルソースを垂らしてから
ツルリとやるのが第一等とされているが
果たしてそうであろうか。
おそれながらJ.C.はその意見に与しかねる。

1年近く前、当ブログの第9話でふれたのだが
わざわざクリックしていただくのはお手数なので
ここにもう一度、参考写真を貼り付ける。

①洗浄前

②洗浄後

とくとご覧いただきたい。
ぜんぜん違うのがお判りでしょう?
①のアブクとヌメリを見たら
そう簡単ににツルリとはいけやせんぜ。

開けたばかりの殻から身を食するのは
豊潤な海の幸をその汚れとともに味わうも一緒、
まさに清濁合わせ飲むことになるのだ。
O157を引き合いに出さずとも牡蠣で痛い目にあった御仁は
この世の中に星の数ほどいるハズ。
そのほとんどの原因は①の写真にあると言っても過言ではない。

さように洗浄は大事である。
若気のいたりでつい歯止めが利かず粗相をしてしまい、
行為のあとであわてて洗浄に走ってもらっても
あとの祭りになりかねないが、胃腸の弱い人にとって
牡蠣の洗浄は必要不可欠と肝に銘じていただきたい。

真っ当な鮨屋における江戸前シゴトの一つに
生の貝を甘酢にくぐらせてにぎるというのがある。
こういうハナシになると毎度ご登場願うのは
浅草の「弁天山美家古寿司」。
あすこでは赤貝にせよ、本ミルにせよ、北寄にせよ、
み~んなそうされてから鮨ににぎられる。

なぜか?
そのほうが旨いからであり、かつ衛生的であるからだ。
洗浄に加え、酢の効果にも一役買ってもらうのだ。
酢の殺菌力は酒精に匹敵するほど強力なものがある。
先人の知恵を侮ってはならない。
彼らは経験上、それを知っていた。
今、その手間を省く、というか、
シゴトを教え込まれていない半端な鮨職人が
いかに多いことか! 嘆かわしい。

次回は気を取り直し、
目からウロコの酢がき&かき酢を味わうといたしましょう。

=つづく=