2012年2月6日月曜日

第245話 酢がきとかき酢 (その2)

前回の稿に関して読者から質問が寄せられた。
かきの洗浄の仕方についてである。
肝心なことなのに説明不足で失礼しました。

それでは、かきの洗浄方法。
買い求めたかきをザルにあけ、万遍なく塩を振ったら
ザルを小刻みにすばやく左右に振り続ける。
するとかきは泡を吹き、灰色のアクが驚くほどに出てくる。
初めての方は本当にビックリしますよ。
思わず「ゲッ!」と声を出した御仁もいました。

ザルを30秒ほど振ったら
フライパンのオムレツの要領で中のかきをひっくり返し、
こちらも30秒振り続け、流水で丁寧に洗い流す。
ザルにしばらく放置して水気を切ったあと、
ペーパータオルで水分を完璧に拭き取る。
これにて完了。

さて、これまた前回の稿の最後に
”酢がきとかき酢を味わう”と書いたら
どっちも一緒じゃないか、どう違うんだ? との問い合わせ。
ふむ、ふむ、その疑問、判らぬではありません。
でも、これが違うんですなァ。

ブツを牡蠣から蛸に置き換えてみるとその違いは一目瞭然。
酢だことたこ酢はまったく別物でしょ?
酢だこは食紅に彩られた酸っぱい加工品で
よくお正月に食べられるヤツ。
一方のたこ酢はたこの足をわかめやきゅうりと合わせ、
二杯酢や三杯酢を掛け回したもの、ですよネ?

酢がきとかき酢も同様なんです。
では、それぞれの作り方。
その前にまず、かきは加熱用を買ってくる。
火を通さず生で食べるのに加熱用を買う。

なぜか?
かきは生食用より加熱用のほうが美味しいからだ。
基本的に両者の鮮度は変わらない。
違うのは養殖水域である。
加熱用はプランクトン豊富にして栄養価の高い水域で育つ。
そのぶん雑菌は増えても身がぶっくりと肥え太るワケ。
当然こちらのほうが旨いに決まっている。
このとき厄介な雑菌を滅却させるのが酢の役割なのだ。

酢の殺菌効果はすんばらしい。
そりゃそうだよ、酢は酒に酢酸菌をブチ込み、
発酵させて作るんだもの。
酢は英語でヴィネガー、仏語ではヴィネーグル。
仏語はvinaigreと綴り、これを分解すると、vin aigre で
何のことかと言えば、”酸っぱいワイン” なんざんす。

あらら、こういう話題になるとハナシがどんどん
あちこちに波及してなかなか終わりゃあしない。
また悪いクセが出てしまったけれど、
作り方はまた明日ということで―。

=つづく=