2012年2月17日金曜日

第254話 浅草公園の夜は更けて (その3)

「神谷バー」を右に出て1つ目の角を右折するとかんのん通り。
そこから新仲見世、オレンジ通り、伝法院通りを経由し、
ホッピー横丁に入って直進し、ひさご通りのアーケードを抜けて
言問通りにぶつかったら左側に「正直ビヤホール」がある。

H社長と落ち合って乾杯。
ついさっきまでアサヒの生だったが、ここではサッポロだ。
当夜は節分で豆まき用の豆が恰好のアテとなった。
滞在時間はホンの10分ほど。
1杯だけにしておいて、吉原方面に向かう千束通りを北進し、
一次会会場の「基寿司」に到着した。

この店との出会いは2003年6月。
土曜日の夕刻に散歩をしていてたまたま見つけた。
キリッとした店構えに好感を抱き、ちょうど晩めしどきなので
暖簾に染め抜かれた電話番号をダイヤルしてみた。

「もしもし、つかぬことをお訊きしますが
  お宅では生わさびを使ってらっしゃいますか?」
「ハァ?・・・(この間しばらく)・・・
  ウチではずっとそれでやってますけど・・・」
「そうですか、それじゃ15分後に2名、
  カウンターでお願いします」
「ハイ、判りました」

以上のやり取りが交わされ、
15分間つぶしてから意気揚々と乗り込んだ。
オカミさんにしてみたら
ずいぶん胡散臭い客だと思ったに違いない。
当方とてその自覚がないでもないが
入店して粉やニセだったら落胆の大きさははかり知れない。
よって鮨屋に初見参の場合、
必ず事前に電話を入れるようにしている。
転ばぬ先の杖とは、実にこのことである。

そうしてつけ台に落ち着いたのだった。
9年前の初夜のいただきモノを列挙してみる。

つまみ
 真子がれい昆布〆・小肌・まぐろ赤身・やりいかエンペラ・
 きゅうり塩漬け・出汁巻き玉子・さざえつぼ焼き・生とり貝

 蒸しあわびとその肝・いさき湯引き・いさき白子ポン酢
 たこ・しゃこ・あぶり平貝

にぎり
 あじ・中とろ・穴子
わさび巻き

お椀
 あさり味噌椀


例によって赤字が特筆モノ。
生まれて初めて食べたいさきの白子は
真鱈や虎河豚のそれを大幅に上回った。
かくしてイサシラは初夏の必食アイテムとなったのである。

=つづく=

「正直ビヤホール」
 東京都台東区浅草2-22-9
 03-3841-7947