2012年2月24日金曜日

第259話 伝通院でイタリアン (その2)

礫川公園の春日局像を尻目に富坂を上る。
この辺り小石川はもともと礫川と綴った。
“礫”の字を目にすると今もなお、
被災地に残る瓦礫の山が思い出されて心が痛む。
その処理はまだ5%にすぎないというではないか。
1年で5%じゃ単純計算であと19年。
これじゃ赤ん坊が成人しちゃうよ。

坂の途中にあった桜鍋の「みの家 小石川店」が
いつの間にか姿を消している。
ずいぶん前に暖簾を下ろしたらしい。
下町・森下の本店のほうは盛況のようだが
都内にはもう、馬肉専門店がほとんど残っちゃいない。
鯨みたいに諸外国の圧力がないのに残念なことだ。

坂を上りきり、伝通院前交差点に到着。
角を院に向かって右折したら
すぐ左手に目当ての「チッタ・アルタ」がある。
浅草の観音様に例えれば
雷門をくぐって仲見世に入るとすぐ左手という感じ。
ちなみに店名は「高台の町」の意味。

伝通院は徳川家ゆかりの古刹で
家康の生母、於大の方の院号から名付けられた。
交差点の反対側で生を受けた作家・永井荷風は
「おのれが生まれ落ちた浮世の片隅」と
この小石川一帯を表現している。

当夜は幹事のA子が突発事故で急遽欠席。
その穴を埋めたゲストが
来月挙式するK子のフィアンセのM本クンである。
したがっていつものようにメンバーは6名。
小体な店のカウンターに横並びした。

結婚まぢかの二人のためにプレミアムモルツで乾杯。
(事前にサッポロ赤星を飲んできて大正解)
ワインは白がピノ・グリージョ。
赤はブルガリアの何とかという銘柄とオルネライア。
琴欧州の脇の如くにブルガリアが甘かったけれど、
ほかの2種は比較的よい選択であった。

おまかせコース・・・¥5,500
前菜・パスタ・メイン・デザート(全8品)

当店のメニューはこれ一本ながら
料理の選択肢は幅広いものがあった。
6人横座りにつき、隣り同士が2人ずつ、
いろいろ頼んで分け合うことにした。

前菜6・プリモ6・セコンド3・ドルチェ5の
以上20皿から選ぶのだから目移りは必至。
どれをどうしたら全8品になったのか忘れたけれど、
とにかく隣りに座った新妻・Y里と検討に入った。

=つづく=