2021年8月12日木曜日

第2718話 隠れメニューの蟹炒飯 (その1)

あれは去年の5月初めのこと。

急にカニが食べたくなったんだガニ。

湯島の「井泉本店」に意気揚々と乗り込み、

かに&胡瓜のサラダ、かにオムレツの

クラブ・ブラザーズで攻めてみたものの、

不満を残す結果を招いた。

 

翌週は二子玉川まで遠征し、

「リヴィエール」のカニクリームコロッケに挑んでイマイチ。

その帰途、渋谷の「なかじま」でカニレタス炒飯。

これはなかなかだったが

カニカニ感あふれるというほどではなかつた。

 

後日、曳舟の「上海菜館」で

ソフトシェルクラブの唐揚げ。

ビールのつまみにはなったが舌はさほど歓ばず。

カニ行脚の旅は失敗に終わった。

 

しかし、そのとき、

度重なる不首尾を救ってくれた店があった。

当コラムではまだ紹介していない。

何たってJ.C.、ひた隠しに隠してきたからネ。

この行動を見て前都知事みたいにセコいヤツめ、

なんて言って欲しくない。

れっきとした理由があるのだ。

 

当該店は北上野の「栄来軒」。

この地に根づいて久しい本格中国料理店だ。

エンコ&ノガミ界隈を徘徊していて

偶然に見つけたのが2年前の初秋。

たたずまいに惹かれた。

昭和の高級中華が時を経てこうなりました、

という姿に心奪われ、数日後に来訪。

 

厨房が1階につき、客は階段で2階に上がる。

ランチサービスメニューが9種ほど並び、

中にはパソコンに出て来ない、

難解な中国文字で記された料理もいくつか―。

時菜三鮮(1400円)というのをお願いした。

 

天然海老・烏賊・蟹と季節野菜の塩味煮はアッサリ仕上げ。

大根醤油・きゅうり甘酢・ザーサイの漬物トリオ、

塩味水菜スープ、レタスサラダ、

ごはんはおひつで運ばれた。

上品な味わいに造り手のセンスが伝わってくる。

 

これはウラを返さにゃなるまい。

2週間後、やはり昼過ぎに訪れた。

千載一隅のラッキーチャンスが

待っているとも知らずに―。

 

=つづく=