2021年8月13日金曜日

第2719話 隠れメニューの蟹炒飯 (その2)

2年前のことながら「栄来軒」を再訪。

今日は麺類にしてみよう。

松茸湯麺や鮑魚湯麺まであるゾ。

でも、あまりぜいたくはできない。

什錦炒麺(945円)を通した。

 

ほかに客は誰もいない。

トワ・エ・モアの歌声が聴こえてきたが、やめとく。

熱い焼きそばをフーフー冷ましつつ食べていると、

男三人組がドヤドヤと上がってきた。

べつにドヤ顔はしてないが会話がやかましい。

コロ助来襲以前のことだから問題はないけどネ。

 

隣りのテーブルに陣取り、メニューも見ずに注文。

驚くなかれ、三人揃ってカニチャーハンと来たもんだ。

ナヌッ? チャーハンなんてあるのかヨ。

あらためてメニューの隅から隅まで再チェック。

炒飯どころか中華丼や天津飯など会飯類が一切ない。

おそらく連中は常連なんだ。

 

焼きそばを食べ終えてしばらく待機。

彼らの蟹炒飯をこの目で確かめるためにネ。

メニューにないから表記が判らんが

おそらく当店ならこうだろうと決めつけて蟹炒飯。

 

オーダーが出揃い「めだかの学校」じゃないけれど、

そおっとのぞいてみたんだガニ。

わおっ、赤い蟹の身肉がハッキリと見てとれた。

 

三度目はお運びのオネバさんにおそるおそる

「蟹炒飯、お願いします」

「ハイ、判りました」

常連でなくとも注文がかなった。

 

以来、たびたびお世話になっているが

今週もガス欠ならぬカニ欠に見舞われて訪問。

あらためてくわしく語ると、

炒飯のカタチはありがちなドーム形ではなく円錐形。

パラパラ系で、具材は白ねぎ・玉子・グリーンピース。

主役のずわい蟹はやや小ぶりながら脚肉が6本。

 

これで990円とは価格破壊もいいところ。

どう安く見積もっても1500円は下らない代物だ。

実山椒がピリリと効いた大根の醤油漬けと

水菜散る塩味スープとが絶にして妙なアクセント。

ただし薄味仕上げにつき、味覚の鋭い人向きではある。

 

ところでカニの仲間にカクレガニというのがいる。

二枚貝に棲みついて隠れたまま片利共生に徹し、

一生を終える小さなカニだが

「栄来軒」の蟹炒飯はカクレガニならぬ隠れメニュー。

大っぴらにしちまったら店に迷惑がかかる。

そう思って長いこと、隠しに隠して来たわけであります。

 

でも、コロ助のために客足がガクンと落ちた。

閉業の憂き目なんて悲劇を招かぬよう、

読者にも利用していただきたいのです。

 

それにしても例のドヤドヤ三人組。

よくぞあのとき現れてくれたものだ。

彼らが来なけりゃ、この蟹炒飯に出会えなかった。

C-C-Bの「ラッキーチャンスをもう一度」が

流れてきたけど、やめときます。

近頃、とみに弱気のJ.C.であります。

 

「栄来軒」

 東京都台東区北上野2-2-4

 03-3841-4175