2021年8月17日火曜日

第2721話 短くも 棲んでいたのは ’57年

ときどき、はるか昔に棲んでいだ町を訪ねたくなる。

この日もそうだった。

23区内に数ヶ所あるが出掛けたのは小田急線・代々木上原。

井之頭通り沿いに古賀政男音楽記念館、

その1ブロック東が仲通り商店街の入口だ。

 

およそ600mの商店街中ほど、

木造二階建てに父親と二人で居そうろったのは1957年。

一家四人が長野市から上京した年だった。

ホンの数ヶ月の短い間ではあったが

母親は大学病院に棲み込み、弟は母の兄夫婦に預けられ、

家族ばらばらの生活は大変だったと思う。

子どもたちに自覚がなくとも親は相当苦労したハズだ。

 

20年前に訪れたとき、民家はまだ残っていた。

その5年後の再訪時はマンションに建て替わっていた。

それでも仲通りは昔のよすがを偲ぶにじゅうぶん。

だからこそ時として心動かされ、無性に訪ねたくなるのだ。

 

仲通り商店街で食べたことのない昼めしを今日は食べよう。

当てがなくても町中華、日本そば屋くらいあるだろう。

この通りなら何処でもかまいやしない。

ところがギッチョン、中華は目下休業中。

かろうじて、そば屋が1軒開いていた。

 

「丹波屋」は棲んでいた家の並び。

井之頭通りからだと、5、6軒手前かな。

かなり広い店内に先客はゼロ。

案の定、ビールはダメだった。

 

名代らしきミニそば&ミニ丼セット(850円)が10種以上。

それぞれに、うめ・きく・はぎ・ばら・ぼたんなど

花の名前が付けられている。

すみれ(いか天丼)と迷った末、

ふじ(かつ丼)を冷たいそばでお願いした。

 

下調べナシの飛び込みにつき、何の期待もしていない。

ところが再びギッチョン、もりが素晴らしい。

見るからに手打ちのそばが冷水でビシッと締められ、

舌の上に清涼感を呼び寄せる。

噛み心地、ノド越し、ともに申し分なし。

つゆも好みのタイプで

もうちょい下世話な甘みがあったら百点満点。

 

もりのボリュームはミニどころじゃなく

ミニかつ丼が要らないくらいなのに

そのかつ丼もかなりのサイズで厚切りロースが3切れも―。

 

商店街を抜け、東大技術研究センターの前を右折。

三角橋を経て小田急線・東北沢駅に到達した。

いや、ずいぶん変わったなァ。

2年前、下北沢の変貌ぶりに驚かされたが

東北沢にはもっとビックリした。

 

駅前の高台にミニ広場が設けられ、

ここから臨む景色は一望の価値あり。

東京ジャーミイ(モスク)のドームとミナレットが

西陽を浴びて輝いている。

 

東北沢だと、住まいの最寄りまで乗り換え不要。

寄り道などせず、おとなしく帰宅の途につきました。

 

「丹波屋」

 東京都渋谷区上原2-40-9

 03-3467-1345