2022年6月8日水曜日

第3032話 盟友・フロム・SH (その3)

一夜明け、朝めしに何か食ったかな?
覚えちゃいない。
ロンドンへはヒッチハイクだ。
さいわい、さほど時間を費やさずに
若い運チャンのトラックが停まり、
ロンドン郊外まで送ってくれた。

それから数日は仕事探しの日々。
ピジョンキラー・マルティンが皿を洗う、
「Wimpy」に職を得たのだった。
(第2922話参照)

ちなみにナイロビを離れる前。
アミン将軍の圧政から解放されたばかりの隣国、
ウガンダの首都カンパラで
久しぶりのハンバーガーを頬張ったのが
当地にあった「Wimpy」。

スタッフに英国娘が居り、
「ウインピーって
 あのピータンパンに出てくる妖精?」
「フフフ、それはウェンディ、だけどウェンディは
 ピーターパンにあこがれる女の子で
 妖精はティンカー・ベルよ」
「ふ~ん、そうかァ、じゃ、ウインピーは?」
「ポパイに出てくるハンバーガー好きの小父さん」

その「Wimpy」に窮地を救われるとは―。
これを単なる偶然と思えぬ、いや、思える自分がいた。
一方、今世界を席巻する「スターバックス」は
メルヴィルの「白鯨」に登場する、
コーヒー好きの航海士だ。
スタバ創業者の脳裏の片隅に
ウインピーがあったのは間違いなかろう。

前フリが長くなっので
ハナシをオッサンズ・タウン、新橋に戻しましょう。
3匹のオッサンはSL広場の真ん前、
ニュー新橋ビルの地下に降りて行った。

この日、1時間近く先乗りしたJ.C.は
1軒め酒場の目星をつけてある。
「龍龍(ロンロン)」という、
和中折衷の飲み処だ。

入店を誘われた女性の感じが好かったからネ。
大陸系の訛りがあるがアチラ系にしては
言葉や物腰が柔らかく、目元も涼やかだった。

友だちを引き連れて舞い戻ると
歓んだ彼女、ていねいな接客で応える。
われわれは中ジョッキをガッチンコ。
一人一品は取ろうと通したのは
空心菜炒め・海老マヨ・麻婆豆腐。

訊けば、小姐は大連生まれ。
大連の第一感は札幌同様にアカシアだ。
今日は裕次郎や西田佐知子の代わりに
キム・ヨンジャの歌声が響いてきた。

=つづく=