2022年6月10日金曜日

第3034話 盟友・フロム・SH (その5)

銀座8丁目の銀座ナイン。
その2階の「かに道楽」に上がっている。
かつて此処には汐留川が流れていた。
長嶋茂雄がジャイアンツに入団した年に
神戸一郎が歌った「銀座九丁目水の上」、
その舞台である。

さて、毛蟹。
1万円と3万円のギャップに
たじろいだものの、応答しなければー。
「そういうふうに訊かれたら 
 1万円のをお願いしちゃうなァ」
「ハイ、かしこまりました」
いえ、こちらもかしこまってんだけどネ。

やはりコンパクトなのが出て来た。
しかし、ちゃんと毛蟹の香りと味はした。
3万円のは相当なサイズだったろう。
食べ足りないので焼き蟹を追加。
今度はズワイ蟹の脚である。
二人の評判はこちらが良かった。

蟹を前にしても誰一人無口にならず、
笑いの絶えぬ楽しい宴だ。
今宵はまだ終らない。
流れたのは日比谷のガード下。
さっきは首都高速の下だったが
今度はJR直下である。

居酒屋「八起」とは半世紀近いつき合い。
1975年夏、ロンドンから帰国したJ.C.は
人生初のサラリーマン生活。
勤め先の免税店がすぐそばにあったのだ。

以前はよく通った「八起」も
1997年秋、NYから帰国後は足が遠のいた。
ビールの銘柄が合わなくてネ。
昔はこだわらずに何でも飲んでいたんだ。

だからというワケでもないが
3人揃って黒ホッピー。
つまみは煮込みを3人前。
個人的に東京三大煮込みの一翼を
担わせている「八起」である。

あとは焼きとん盛合わせと名物のチャーメン。
これは豚の脳みそ入りもやし炒めだ。
ホッピーを何杯かお替りし、
ようやくお開きとなった。

以前よりひんぱんに帰国するヨと語るS水に
われわれの受け入れ体勢も万全。
なんだかんだ飲んだくれた3匹のオッサンは
3軒回らないと、どうにも収まらないのでした。

=おしまい=

「かに道楽 銀座八丁目店」
 東京都中央区銀座8-7
 ギンザナイン2号館2F
 03-3572-7272

「八起」
 東京都千代田区有楽町2-1-21 2F
 03-3591-2778