2022年8月22日月曜日

第3085話 夏の午後 麦酒と洋食 柳橋

かつて11年余り棲んだ町、台東区・柳橋へ。
江戸の昔には札差の財力により、
隆盛を極めた花街である。
今では廃れ果てて見る影もないけれどー。

行きつけだった洋食店「大吉」は
作家・池波正太郎翁もたびたび訪れた。
6人掛けの端と端に若者と相席。
つぶさに眺めたわけではないが
男か女か見分けがつかなかった。
BGMは四半世紀前と相も変わらずビートルズ。

ドライの大瓶をトクトクやってメニューを開く。
本日のランチメニューにカニクリームコロッケと
ハンバーグの盛合わせ(1350円)があった。
しかもタラバ蟹タップリとあり、即注に及ぶ。
ライス・味噌汁は辞退した。

恥ずかしながら白状すると
前日にも上野アメ横の行きつけにて
カニクリコロでビールを飲んだのだ。
居酒屋価格なのにけっこう旨いんでネ。

コロッケは本当にタラバがゴロゴロ、うれしいな。
こいつはカニコロどころかカニゴロだ。
ゆで玉子ふんだんのタルタルソースもナイス。
ハンバーグは牛挽きが主張するタイプ。
デミグラスと中濃を合わせたようなソース。
付合せはキャベツ・トマト・きゅうり・パセリ。

マカロニサラダもありがたい。
これはスクリュータイプのフジッリ。
ねじりん棒のネジネジだから
中尾彬なんか泣いて歓ぶハズ。

古巣の空間で心身ともにくつろぐ夏の午後。
麦酒と洋食が舌とノドに涼風を吹かせてもくれる。
リードヴォーカルがポールの
「アンド・アイ・ラヴ・ハー」が耳に心地よい。

玄関でピックアップした小冊子、
”柳橋 ぶらぶらMAP”を開いた。
帽子屋や手芸の店とは無縁ながら
飲食は訪れた店ばかり。

巻末に晩年をこの町に暮らした市丸が
三味を抱えるスナップがー。
昭和36年の柳橋(橋です)と
猪牙舟(ちょきぶね)の遠景もー。

正岡子規の詠んだ句が載っている。

春の夜や女見送る柳橋

感心しないなァ。
句界の改革を成し遂げた、
子規とは思えぬ凡句ですネ、これはー。

「洋食 大吉」
 東京都台東区柳橋1-30-5
 03-3866-7969