2023年7月18日火曜日

第3320話 銀座で毎晩 飲んだ日々 (その2)

銀座8丁目のバー「魔里」。
「そうだったの? よかったわ。
 あちらヤス子さん」
「エエ~ッ!」
「こんばんわ、長嶺です」
「はじめまして、J.C.です.
 いえ、こちらはレディオ・シティで
 お目に掛かってますけど」
 「ああ、『卒都婆小町』ネ」
 
その日は彼女の満70歳の誕生日。
よって2006年2月13日だったことが判る。
そうと聞いては黙っていられない。
「魔里」の向かいのビルに懇意にしていた、
イタリア料理店があり、電話を入れた。

20分後。
「ハッピー・バースデイ」の歌声とともに
ロウソクを点したバースデイ・ケーキが登場。
声の主は
シェフ、スー・シェフ、マネージャーの3人。

われながらちょいとキザだけど
粋なことをするもんだと思いつつも
ヤス子さんは感動して涙ぐんでいた。
この出逢いがキッカケとなり、
以後、彼女と親交を深めることになる。

「魔里」でたびたび止まり木をシェアしたのは
テラカンこと故・小林亜星さん。
ママとはマブのマブ、大のマブだちだ。

ママは酔っぱらうと、
「亜星、亜星!」と呼び捨てにしては
あの丸い顔のオデコやホッペタをこねくり回し、
仕舞いにゃ頭をバシバシひっぱたくんだ。
巨星はまったくのされるがまま、
いや、むしろ歓んでるフシすらあった。

ママの配下にはE美子というコがいて
当時、三十路に足を踏み入れたばかり。
銀座のオンナとしては極めて珍しく、
計算高いところなど微塵もない。
人懐っこい笑顔がウリで
オトコたちの人気を集めていた

ママとE美子とは実によく飲み歩いた。
もはやのみともの域を超えていた。
「Approach」を紹介したら
彼女たちがハマッてしまい、
自分たちの店がハネると直行。
挙句の果てにゃヒマな夜など
早仕舞いして駆けつける始末。

アリンコに砂糖をまぶす。
そんな結果を招くことになった。

=つづく=