2023年7月21日金曜日

第3323話 懐かしい顔と顔

E美子からのメールはこうだった。
(こんばんわ
   Approach ’月28日で締めるそうです)
(閉める前に飲みに行くかい?)
(はーい! お願いいたします)

そうして待ち合わせたのは銀座の名門校、
泰明小学校そばの日本そば屋「泰明庵」の2階。
そばもさることながら刺身や天ぷらが好い店だ。

さっそくドライのグラスをカチン。
積もるハナシは山よりも高い。
E美子の顔を最後に観たのは
震災の翌年だから11年も前。
いや、懐かしい。
人目もはばからず、抱きしめてやりたいくらいだ。

あの時は久々に「Approach」に顔を出したら
チーフのトミーが「J.C.来てるヨ」と
バー「魔里」に電話を入れてくれ、
魔里ママとE美子が駆けつけてくれたのだった。

そのママは2年半前に亡くなっていた。
食堂ガンである。
亡くなる前月まで店に立ち、
E美子は最後まで一緒だったと言う。

そしてそれから3カ月。
彼女は「魔里」のすぐそばに
小さなお店を持つこととなる。
E美子は銀座のママになったのだ。

「泰明庵」のつまみは
平目&本まぐろの刺身。
それに珍魚・ギンポの天ぷら。
相方は出羽錦の冷たいのに切り替え、
当方はこれから強いカクテルを何杯も飲むため、
ずっとビールで通した。

E美子にはごまだれせいろで締めさせて
お勘定は1万円で小銭のオツリが来た。
いざ、7丁目の「Approach」へ。

ドアを開くと
「アッ、J.C.!」
「よぉ、トミー!」
てなもんや三度笠。

E美子曰く、サプライズにしといたとのこと。
3人でグラスを合わせた。
J.C.とE美子はホワイトレディのハードシェイク。
トミーはスコッチかバーボンの水割り。

此処でもハナシは積もりに積もる。
カクテルはサイドカーから
ビトウィン・ザ・シーツへと移行する。
自分の店に戻りゆくE美子の肩を叩き、
二人のオッサンはあらためて飲み直すのでした。

「泰明庵」
 東京都中央区銀座6-3-14
 03-3571-0840