2024年1月9日火曜日

第3445話 サックスが 奏でる無声の 安二郎 (その2)

房総ポーク煮込みカレーが無いなら
房総ポークカレーにするほかない。
うん、辛さと酸味が調和して
なかなかの美味を生み出している。

ただし、ライスもルウもけっこうな量。
ライス少な目にすべきだった。
大根のピクルスを活用しつつも
途中でちょいと飽きてきた。

切盛りはインド人もしくは
ネパール人のオジさん独りきり。
残したら彼を落胆させるので
かなり頑張ってどうにか完食した。

映画まで時間はたっぷり。
晩酌のつまみを調達し、いったん帰宅した。
しばらく身体を休めて再出発。
開場30分前に到着するとすでにチケットは完売。
先刻買った自分の整理番号は99席中56番。
1番~5番、6番~10番と
5人づつ入場してゆくシステムだ。

サックス奏者は竹内理恵さんという若い女性。
短い音合わせの末に上映開始である。
岡田嘉子と江川宇礼雄扮する姉弟が画面に現れた。
岡田嘉子は年末に寅さん映画で観たばかりだが
「東京の女」はその42年も前の作品だ。

ドイツ人の父と日本人の母との間に生まれた江川は
小津安二郎の初期の作品では
岡田茉莉子の実父、岡田時彦とともに常連。
小津はバタ臭い面貌の男優を好んだ。
逆に女優では常連中の常連、田中絹代をはじめ、
飯田蝶子、杉村春子など醤油顔がお気に入り。

いや、原節子や岩下志麻はそうでもないし、
岸恵子、山本富士子、司葉子、
有馬稲子にいたっては醤油じゃなくて
むしろソースだけれど、稲子の2本以外、
3人はそれぞれ1本づつしか出演していない。

肝心の「東京の女」だがデキはよくなかった。
パンフレットには嘉子が緊張感たっぷりに
主演した絶品サスペンス、とあっても
サスペンスと呼ぶにムリがあるネ。
竹内さんのサックスは効果的で
スクリーンに緊張感を与えていた。

それでも嘉子の美しさは際立っていて
心奪われるものがあった。
恋多き女を待ち受ける過酷な運命。
その悲劇に思いを致すと胸が熱くなる。

一時期、帰国していた彼女は結局、
ソ連での生活を択び、
再び渡航して二度と帰らない。
逃避行の相手、杉本良吉は拷問の果てに
2年後、銃殺刑に処せられた。
嘉子がその事実を知ったのは
ずっとあとのことである。

「カレー食堂 たんどーる」
 東京都千代田区神田神保町1-25-5
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