若い頃はほとんど利用しなかった、
バスによる移動だが
最近はとても気に入っている。
何も見えないメトロでは
気付かなかった景色の楽しさ。
当たり前だろ! と言われても
まさに目からウロコがポロリ。
加えて好いことがもう一つ。
飲食店の新たな発見に繋がる。
これは何物にも代えがたい。
荒川区役所に近い、
「ますや」もそんな1軒だ。
浅草寿町行きのバスの車窓から
この日本そばの老舗を目視した。
素朴な佇まいなれど、
コレは佳い店に違いない、
そう、思わせるものがあった。
以来、何度かおジャマしている。
忘れられないのは初回。
右手にカウンター5席。
左手に4人掛けが5卓あり、
一番奥に2人掛けが1卓。
そこに案内された。
まずはドライの大瓶と
まぐろとろろを通した。
いわゆるまぐろ山かけだ。
ふと見やった壁に2枚の写真。
セピア色の撮影は昭和10年。
店頭に3人の男性が
今、出前に出発するところ。
3人の女性はお見送りである。
みなずいぶん担いでいるけど
うち1人がスゴいのなんのっ!
そばとどんぶりが15段重ねだ。
道中大変だろうが目的地に着き、
どうやって着地させるんだ?
これはすでにサーカスの世界。
彼らはまさに曲芸師である。
写真に写る屋号は「桝屋」。
住所は足立区栗原町とあった。
この地名は今も残り、
東武伊勢崎線・西新井駅の
北側に当たる。
いずれにしろ度肝を抜かれた。
=つづく=