2011年10月5日水曜日

第155話 恋は小岩ではしご酒 (その4)

JR総武線・小岩駅構内を縦断して南口へ。
南口を出たらそのまま線路沿いを千葉方面に向かうと
間もなく小岩地蔵通りなる飲み屋街に吸い込まれる。
軒(のき)を連ねているのは大衆的な居酒屋ばかりで
典型的な場末感が辺り一帯に漂っている。

今宵は初見参の「阿波屋」に目星をつけた。
界隈をグルッと周回して決めたのだ。
ちょうど店の裏手に回ったとき、
近所のオバさんとダベりながら店主が生イカをさばいていた。
なじみの客には小売りもするのだろうか。

店内は節電中の様子、相当に薄暗い。
接客の女性がなかなかの美形にして
ちょいと宝塚のタチ役を思わせ、店の暗さをカバーする。
もっとも”夜目、遠目、傘の内”というくらいで
若干割り引いたほうがいいかもしれない。

四半刻ほど歩いたおかげか、シラフに戻った。
いや、少なくとも本人は戻ったつもり、あらためて飲み直しだ。
独りのはしごはまたこれで言うに言われぬ楽しさがある。

スーパードライの中ジョッキは他店より大きめ。
店によっては中だか小だか判別しにくいのがあるけれど、
生ビールのジョッキたるもの、
そこそこのサイズがないと、みじめったらしくていけない。

目の前のカウンターに大皿料理が何皿か。
ピリ辛しらたき、苦瓜の豚玉炒め、茄子南蛮漬け、
セロリときゅうりの塩炒めなんぞが並んでいる。
シゴトにおざなりな部分は見受けられない。

ただし、突き出しの小鉢には一瞬「ウッ」となった。
見れば、メカブともやしがゴチャ混ぜになってるじゃないか。
こういうものは別々に食べたいなァと思いつつ、
イヤイヤ箸をのばしてみると、
あにはからんや、味は悪くなかった。
でもネ、ちょtっとネ・・・結局、半分残しました。

どうやらここは海鮮モノと焼きとんの両刀使いのようだ。
刺身は平目・金目・ほうぼう・かつおのラインアップ。
大きな毛蟹が半身で1800円と、
これには惹かれたものの、蟹は当たり外れが大きい。
第一、大の男がカウンターで独り、
黙々と毛蟹をむさぼる姿はあんまり絵にならんし・・・。

しばし悩んで三陸名物、どんこの煮付けに白羽の矢。
はるか昔、福島県いわき市の教習所で運転免許を取ったとき、
夜な夜ないわき駅前の商店街に繰り出して
地魚のどんこやメヒカリをさんざん食べたっけ・・・。
ところがこのどんこクン、鮮度落ちで感心しなかった。
酎ハイに切り替え、完食はしたものの不完全燃焼気味。
そうそうに会計を済ませ、夜の街に出る。

次の狙いは京成小岩方面。
酔い覚ましに歩くにはちょうどよい。
柴又街道を一路北に向かう。
と、ここまで書いたが、この項もすでに(その4)、
あまりに長くなりすぎた。
このエリアを紹介するまたの機会もあろう。
てなこって、いったん筆を納めます。

=おしまい=

「阿波屋」
 東京都江戸川区南小岩7-25-17
 03-3657-1448