2014年5月23日金曜日

第844話 若大将の影の魅力 (その2)

成瀬巳喜男の遺作となった、
「乱れ雲」が封切られたのは1967年11月。
その2ヶ月前にリリースされた加山雄三の曲がある。
タイトルは「別れたあの人」。
まずはお聴きくださ、もとい、お読みくだされ。

 ♪ 手紙を焼いた たそがれの
   真っ赤な夕陽が 目にいたい
   ふたりの恋の 残り火が
   どうして僕に 消せるだろう
   やさしく白い 衿あしに
   かさねた くちづけ
   あなたにだけは あなたにだけは
   幸せ くるように       

   別れが来ると 知りながら
   渡ってしまった 恋の橋
   あなたの淡い 移り香を
   明日はどこで 思い出そう
   涙にぬれた おくれ毛に
   ふるえる 夜風よ
   さみしい声で さみしい声で
   誰かが 歌ってる

   あなたのほかに 恋人は
   この世のはてまで あるものか
   小さな肩の ほくろさえ
   唇ふれた 僕のもの
   せつない恋に 酔いしれた
   かえらぬ 月日よ
   星さえ消えて 星さえ消えて
   空には 雨がふる       ♪

       (作詞:岩谷時子)

めったなことでは3番まで一気に紹介しないのだが
この曲は大の気に入り、勘弁しておくんなさい。
昨秋亡くなった岩谷時子の作詞。
作曲は弾厚作こと、加山雄三である。

楽曲「別れたあの人」と、映画「乱れ雲」が
同時期に重なるのは単なる偶然ではない。
上記の歌詞をいま一度、たどってみてほしい。
相手の女性は間違いなく年上だ。
それもおそらく人妻、あるいは未亡人だろう。

才人・岩谷がこの詞を創作するにあたって
モチーフとなったのは「乱れ雲」だったハズ。
いや、さかのぼること4年、
「乱れる」であったかもしれないのだ。

=つづく=