2014年5月1日木曜日

第828話 ”食べ”の駱駝に行きました (その5)

道半ばにしてこれはもう期待はできないな、と思った。
いえ、谷中「ザクロ」のエスニックフードのことである。
あとはハナシの種のキャメルを待つばかり。

当夜の面子はいずれもラクダ肉初体験だった。
ただし、J.C.はラクダに似ていなくもない、
コブ牛のコブ肉なら食べたことがある。
表参道のフレンチ「Flo」が閉店して
その跡地に開業したブラジリアン・シュラスコの店、
「バルバッコア・グリル」でのこと。
確かクッピンという名ではなかったかな。

コンビーフそっくりのファイバーの立った食感に
食味もまことにけっこう、
珍味と呼んで差し支えのない好印象を残してくれた。
何かの雑誌で読んだ記事に
かのアントニオ猪木の好物がこのコブ肉とあった。
そう、彼はブラジル育ちだったネ。

さて、卓上には鳥レバー&しし唐の炒め煮と
バスマティライスが運ばれた。
ハツだのレバーだの、内蔵肉ばかりが供される。
モツが苦手の方が来店しようものなら
”谷根千の悲劇”が生まれること請け合いだ。
バスマティライスはインディカ米の代表格。
ただ、この店の料理にはあまりマッチしない。
やはりカレーがほしくなる。

ここでいよいよラクダくんの登場。
はたして真打ちと呼べるほどの滋味を
蓄えていてくれるのであろうか・・・。

  ♪ 月の砂漠を はるばると 
   旅のらくだがゆきました 
   金と銀とのくら置いて
   二つならんでゆきました 

   金のくらには銀のかめ
   銀のくらには金のかめ
   二つのかめは それぞれに 
   ひもで結んでありました   ♪

     (作詞:加藤まさを)

見た目はこうであった。
別段、何の変哲もない
脂身の少ない赤身系であることは判る。
そして”焼き”や”炒め”ではない煮込みであることも。

一同、小分けにしてフォークの先で突つく。
そうして互いの顔を見つめ合った。

=つづく=