2014年8月7日木曜日

第898話 深川が葛飾にあった! (その1)

JR常磐線・金町。
駅から歩いて3分ほどで到着する焼きとんの佳店、
「ブウちゃん」については、つい先日綴った。
今話はその「ブウちゃん」を訪れる道すがら、
たまたま発見した酒場を紹介したい。

その名は「深川酒場」。
そう、葛飾・金町に深川があったのだ。
寂れた旧商店街をちょいと横に入ったところにもかかわらず、
意想外に間口の広い店。
掲げた暖簾に相応の風格が漂う。
地元の方には失礼ながら、金町にこんな酒場があったとは―。
いや、ビックリなのであった。

その夜はすでに更けて
たとえ入店できたにせよ、そう長居はできまい。
よって後日、出直すことにした。

でもって初訪問の夜である。
22時前後であったろうか?
暖簾がしまわれていないし、店内からは灯りがもれている。
初めて入る飲み屋は出たとこ勝負の楽しさがある。

屋号からして昔かたぎのオヤジさんが取り仕切る店と想像したが
あにはからんや、初老の女将と彼女を補佐する中年女性、
二人だけの切盛りであった。
そして二人が二人とも若かりし頃はそれなりの器量良しと、
うかがい知れる容貌の持ち主だ。
そこはかとない気品が匂い経つ。
(ちょっとホメすぎかな?)

大瓶のビールを頼むと、突き出しに出たのがタコ酢だ。
気が利いており、これだけで期待がふくらむ。
座ったカウンターの真ん前にショーケースがあって
まぐろ赤身、〆さば、そして白身が一サク。
ちょっと見、平目でも真鯛でもないからカンパチあたりだろうか。
品書きに縞アジがあったからこれに違いない。
しかし、驚いたなァ、縞アジを供する大衆酒場が葛飾煮あったとは―。

品書き札とメニューボードを吟味したうえで、その縞アジをお願いした。
すると、するとですヨ、想像を超えた傑物ふが登場したのだ。
ふ~ん、やるモンですねェ。
わさびこそニセなれど、良質な素材はうれしい誤算であった。

ケースには串打ちされた鳥ハツもあって好物につき、追加した。
「ブウちゃん」に焼きとんはあっても
焼き鳥はないから好都合、ちょうどよかった。
こりゃ、いい店に出会ったゾ。

浅い時間に再訪してもうちょっと長居をしてみたい。
その夜は早々にお勘定。
何と2千円でオツリがきたのだった。

=つづく=