2014年8月21日木曜日

第908話 さいはてのスピリッツ (その1)

 ♪ 上野発の夜行列車 おりた時から
   青森駅は 雪の中
   北へ帰る人の群れは 誰も無口で
   海鳴りだけを きいている
   私もひとり 連絡船に乗り
   こごえそうな鴎見つめ 泣いていました
   ああ 津軽海峡 冬景色     ♪
          (作詞:阿久悠)

言わずと知れた石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」。
「天城越え」と並ぶ、彼女最大のヒット曲であろう。

さて、その日のJ.C.、上野発は上野発でも
夜行列車とはほど遠い、都営バスに乗り込んだのだった。
松坂屋前から乗ったバスは池袋東口行き。
通常はこの路線、大塚駅前どまりだが
5~6本に1本、その先の池袋まで運行する。

降りたのは終点ではなく手前の大塚である。
東京では3本の指に入る酒亭、
「江戸一」に出向くと、思った通り休業中。
お盆明けの月曜のことで
もともと「江戸一」の休みは月曜日だから当然だ。
店のシャッターに貼られたお達しを読むと、
お盆をはさんで10日間ほどの長期休暇ではないの。
名店の余裕というほかはない。

当ブログでも何回か書いているから
ご存知の読者も多かろうが
大塚に来ると「江戸一」&「富久晴」はワンセット。
さっそく焼きとんの「富久晴」に向かった。
両店の距離は徒歩2分足らずである。

店先に縄のれん。
縄では店名を染められず、のれんは無名。
しかし、晩酌が恋しくて訪れる夕雀にとって
縄のれんは実にシックリくるのである。
帰巣本能を受け止められたような気がするもの。

キリンラガーを飲みつつ、
所望した串はカシラとハツを塩で―。
相変わらず、良質な豚もつだ。
カシラの噛み応え、ハツのクニュクニュ感がたまりません。

続いてのタンも塩、これはまずまず。
もともとあまり好まぬ部位だけに満足感も中くらい。
朝鮮焼肉屋でタン塩は頼まないし、
洋食店でタンシチューを注文することもない。
したがってみちのく・仙台を訪れても牛タン屋には入らぬ。
牛タンの駅弁やみやげ品ともまったく無縁の身なのだ。

=つづく=