2014年8月26日火曜日

第911話 さいはてのスピリッツ (その4)

豊島区・大塚は三業通り、居酒屋「さんぺい」にいる。
泡盛の有無を訊ねてみると、恐ろしきかな、
アルコール度数60度のスゴいのがあるというじゃないか!
いや、マイッたな。
でも、ここで引き下がるJ.C.ではない。
自宅にあるポーランド産ウォッカ、
スピリタスははるか高く96度だからネ。
何たってボトルの裏ラベルにこうあるもの。

 蒸留を繰り返すこと70数回、
 純度を極めたポーランド産ウォッカの雄です。
 アルコール度数が高いため、火気に注意してください。

スピリタスほどではないが、そのキツいヤツをロックで注文。
おっと、その前にひとこと。
お待たせしました、江東区のM村サン、
これが”さいはてのスピリッツ”にござんす。

なぜ”さいはて”かというと、
この”どなん”なるスピリッツ、
沖縄は南西諸島八重山列島、与那国島の産なのだ。
日本最西端の島の向こうはもう台湾、
与那国島はさいはての国境の島である。

さて、どなん。
実はコレ、泡盛であって泡盛ではない。
酒税法によって泡盛は45度以下と定められており、
これを超えると”花酒”と呼ばれるそうだ。

なみなみと注がれたロックグラスのサイドには
しっかりとチェイサーを置いて飲み始める。
「くわ~っ、キツいや!」
こりゃ、とてもじゃないがロックじゃ飲めないゾ。
ロックのまま、キュ~ッとやって
何とか追い水のスペースを作った。

つまみはJ.C.をこの店に誘い込んだめじまぐろ刺しだ。
鱧と水茄子もよかったけれど、めじは大当たり。
切り身はピンクと真紅のツートンカラーで
これはめじはめじでも、かなりの年長であろう。
本わさ混じりの粉わさだ少々残念だが
実に美味しいまぐろであった。

調子に乗って2杯のどなんをやっつけ、
気分よく夜の街に出る。
駅に向かって歩き始めると、何だか足元がおぼつかない。
こりゃ、千鳥足もいいとこだぜ。
こんな状態、何年ぶりだろう。

平均台の上を歩くように真っ直ぐ行こうと思っても
どうにもフラついて仕方がない。
そうこうしながら夜風に当たっているうち、
どうにかまともになってきた。
いや、”さいはてのスピリッツ”、おそるべし。

=おしまい=

「さんぺい」
 東京都豊島区南大塚1-50-10
 03-3942-6240