2015年11月13日金曜日

第1229話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その3)

昭和歌謡を代表する作曲家・古賀政男が愛顧した、
代々木上原のうなぎ屋「鮒与」を久しぶりに訪れた。

この日は2ヶ月に一ぺんの理髪日であった。
ヘアサロン「B」は
このほど解体の決まった渋谷区役所の真ん前にある。
もともと嫌いな渋谷の街、
せっかく出かけるからには何か付加価値を求めたい。
晩酌するか、晩めしを食うか、なのである。

当日は珍しくも昼めしのために代々木上原に赴いたのだった。
「鮒与」は以前とまったく変わらぬたたずまい。
何となく安心して暖簾をくぐった。

先客は1名のみ。
60代だろうか、初老の男性が蒲焼きをつまみに
日本酒をチビリちびりと飲っていた。
遠方から遠征してきた様子はないから
近隣に棲む常連サンだろう。

こちらも負けじと、というわけでもないがキリンラガーを注文。
もっとも清酒とビールじゃすでに負けかもネ。
それにしてもここ「鮒与」、
相いも変わらずキリンとエビスしか置いてない。
判ってないねェ、ホントにまったく融通が利かないんだワ。

エビスなら飲まないが
キリンラガーは無いよりマシにつき、所望した。
そうしておいて大好物の肝焼きを2本お願いの巻。
他人のフリ見てわがフリ直せ、
先客が肝焼きを追加した。
そうでしょう、そうでしょう。

肝焼きが整うまで少々手持無沙汰。
ひまつぶしに携帯電話の手を借りる。
その間、2通ほどメールのやり取りを済ませた。

しばらくして到着した肝焼きがドデカい。
前回の訪問からすでに何年か経過しているので
ハッキリした覚えはないが
こんなに大きな串ではなかったなァ。

一片を咀嚼して疑問が確信に変わる。
明らかに以前とは違うのだ。
悪くはないけれど、期待していたモノとは異なる。
まさか中国産ではあるまいが
肝だけ別に仕入れたモノと推察された。

なぜそんなことが判るんだ!ってか?
その答えは次話で―。

=つづくー