2015年11月23日月曜日

第1235話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その9)

1979年夏。
佐渡の相川。
日中は金山を訪ねたり、海水浴場で泳いだりしたが
夜はどこで晩酌して、どこで晩めしを食べたのか、
まったく記憶がない。
おそらく近場の居酒屋だったであろうヨ。
 
宿に戻り、窓ガラス越しに暗い海を眺める。
窓を開け放つとおびただしい数の虫たちが来襲してくるからネ。
夜の佐渡の海は「漁火恋歌」の歌詞そのまんま。
  
 ♪   ハー  沖でゆれてるヨー
   アー  あの漁火は
   好きなあなたが  好きなあなたが
   烏賊釣る 小船ヨー     ♪

なのであった。

音が無いと判じにくいが
上記の部分は「佐渡おけさ」調。
そう、「漁火恋歌」の舞台は佐渡ヶ島にほかならない。

1泊目だったか2泊目だったか、
夜が明けて朝めしを宿のそばの食堂でとったことは覚えている。
朝からイカの刺身が出てきてビックリしたから記憶に残ったのだ。

生モノはけして嫌いではないが
朝から刺身というのはどうもネ。
焼き魚にしたって生を焼いたものより、
アジの開きや塩ジャケが好ましい。
このひと干し、このひと塩が
にっぽんの朝食の食卓にあるべき姿だ。
とにもかくにも佐渡は島中、イカであふれかえっていた。

神楽坂の「駒安」である。
てっきりイカの一夜干しと早合点したのはこちらの勘違い。
実物は品書きに書いてある通り丸干しだった。
したがってワタもそのまま残されている。
スルメほどカチンコチンではないものの、
いわゆるセミドライ仕上げだ。

刺身→一夜干し→丸干し→するめ
(フレッシュ→セミフレッシュ→セミドライ→ドライ)

といった感じの流れかな。

丸干しのせいで日本酒が欲しくなったが
当夜はこれから動坂下のスナックにて二次会の予定。
先が長いのでガマンする。

瓶ビールと一緒に牛すじの煮込みを追加した。
この店では煮込みに
豆腐・ニラ・キムチをそれぞれ好みでトッピングしてもらえる。
なかなかユニークなアイデアである。

=つづく=