2015年11月18日水曜日

第1232話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その6)

今の東京、吸い殻のポイ捨てはもちろん、歩き煙草も禁止。
郊外区の条例はよく織らないが
都心部の千代田区や文京区はかなり厳しい。

煙草の吸える場所がほとんどなく、
公園のベンチもアウトだから
気兼ねなく愛煙可能なのは
自宅以外は居酒屋やバーに限られてしまう。
喫煙者はつくづく肩身が狭い思いをしている。

さて、歩行のつづき、つづき。
宮益坂上で青山通りに出る。
表参道の四つ角を左折し、
進路を原宿方面にとったもののすぐに右折した。

しばらくごぶさたしている、
ブラジリアン・シュラスコの「バルバッコア・グリル」に差し掛かった。
開店前で様子が判らないが、たぶん繁盛しているのだろう。
現代人は牛肉が大好きだからネ。
立ち食いでステーキを食べさせる「いきなり!ステーキ!」など、
どんどん支店網を拡げている。

とんかつの人気店「まい泉」は中休みもとらずに営業中。
それにしても以前と比べてずいぶん値段が上がった印象。
上野の老舗「ぽん多」や「蓬莱屋」並みになっている。

「まい泉」の女社長は
もともと湯島の「井泉本店」でお運びを担当していた人。
それが今や本家をしのいで飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
判官びいきをするわけじゃないが
J.C.はまぎれもない「井泉」派を自認する。

湯島本店の2階座敷で味わうとんかつは
古く良かりし昭和の情緒が付加価値となって
その美味しさが倍加するように感じるのだ。

ガラス越しにのぞいた「まい泉」の店内は
中途半端な時間帯にもかかわらず、それなりの客足。
デパ地下でいくらでも買えるのに
かなりの人気を誇っていると言ってよい。

「まい泉」の並び、数軒先にコンビニのファミリーマート。
ストリートからちょっと奥まって
あいだのスペースがテラス風に設えられている。
家族連れが憩っていたり、オジさんがビールを飲んでたりする。

まだ大して歩いてないけれど、
オジさんの缶ビールに条件反射、ノドの渇きを覚えた。
スーパードライのロング缶を買い求め、
立ち去ったオジさんが空けた席に陣取った。
プシューッ! グビグビッ!
花の青山、表参道の黄昏どきである。

=つづく=