2015年11月17日火曜日

第1231話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その5)

渋谷のヘアサロン「B」にて
新妻・K子チャンに髪を任せながら雑談。

「区役所建て替えるんだねェ」
「そうなんですヨ、長いこと工事されると思うとユウウツで―」
「そんなに長く掛からないと思うヨ」
「エッ、どうしてですか?」
「どうせ近頃流行りの杭打ち浅めだろうし・・・」
「アハ、アハハハ・・・」

この女(ひと)とは十数年もの長きに渡り、
必ず2ヶ月毎に顔を合わせていることになる。
わが実生活において他にそんな女が
はたしているだろうか?いや、いないネ。
コレってスゴくなぁい~ッ?

多くの読者に
「バッカじゃねェの?」―そう言われそう。
よって前に進もう。

およそ50分で理髪は終了。
カットとシャンプーだけだから簡単だ。
ヘアサロン「B」はいつも空いていてリラックスできる。
他店にあるまじき快適な空間がここにある。
おそらく足腰が立たなくなるまでこの店に通い続けるのだろう。
まだ先がナゲェな。

 一に新宿 二に渋谷 三、四がなくて 五に秋葉原

突然のことで驚かれたろうが
都内の街のわがワースト・スリーである。
そんな渋谷に定期的に出没するのはヘアカットのためだけだ。
来たくもない場所に来なければならない。
腐れ縁はこれからも続くのだ。

夜の予定は神楽坂で二人飲み。
時間がずいぶん空いたので歩くことにする。

渋谷駅前の雑踏を避けて宮下公園下のガードをくぐり、
宮益坂の隣りの小坂をのぼってゆくと左手に小さな公園。
いや、驚いたネ。
片隅に飲料水の自販機がいくつか並び、
その前に黒山の人だかりである。

いえ、缶コーヒーやお~いお茶を買い求める人々ではなく、
実際はオール・スモーカーであった。
自販機のの脇にいくつかスモーキング・スタンドが置いてあり、
近隣のリーマンやフリーターの諸君が憩いの場としている景色。
砂漠のオアシスに水を求めて集結する、
動物たちと形容すれば聞こえがいいが
こりゃどう見ても蜜に群がる蟻ん子ですぜ。

=つづく=