2015年11月16日月曜日

第1230話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その4)

上原のうなぎ店「鮒与」。
ビッグサイズの肝焼きを肴にビールを飲んでいる。
なぜ、この肝が当店で捌いたうなぎのソレではなく、
別途仕入れたモノだと判るのか?

通常、他店では売り切れ御免が多々あり、
たとえありつけたとしても1人1本までの店が多い。
ところが「鮒与」では1人で2本食おうが
3本食おうがお構いナシなのだ。
都内にこんな店はほとんどないのではないか。

かような量のうな肝を用意するには
何十匹もの、いや、百匹以上のうなぎが必要。
普通の店では肝吸いに活用され、
肝焼きまでは手が回らないのが実情だろう。

かなりの食べ応えは多少大味ながら
1串400円と良心的な値付けは好感が持てる。
以前も複数本注文できたから当店の伝統なのであろうヨ。

金1600円也のうな重(並)が到着して
別仕入れの事実がさらに裏付けられた。
炊き立てのごはんの上に
チョコンと鎮座ましましている蒲焼は小ぶりな個体の半尾分。
こんな小さなうなぎから取った肝があんなにデカいハズがない。

でもって重箱のうなぎだが上から番茶でもぶっかければ
鰻茶漬けと見まごうばかりのスモールサイズ。
食べていて胸の奥から侘しさが這い上がってくる始末。
しかしながらうなぎは小ぶりなほうがよい。
デリケートな滋味がしみじみと伝わるからネ。

したがってJ.C.の場合、うなぎ屋においては(並)専門。
松・竹・梅のケースは(梅)を選択する。
ときどき並びが梅・竹・松と逆の店があるけれど、
その際はむろんのことに(松)である。

ちょいとばかり肝に辟易としてしまい、肝吸いはパス。
古漬けのきゅうり&大根の新香とともに
うなぎ少なめのうな重(並)を食べ終え、
渋谷の街に向けて歩を進めた。

渋谷区役所前のヘアサロン「B」で
10年来、髪を切ってくれているK子チャンとよもやま話。
去年、韓国の若者と所帯を持った彼女、
食生活の不適合が悩みの種だとこぼすものの、
おおむねシアワセな新婚家庭を営んでいる様子だ。
まずはめでたし。

=つづく=

「鮒与」
 東京都渋谷区上原1-34-8
 03-3467-6231