2015年11月24日火曜日

第1236話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その10)

神楽坂の焼き鳥屋「駒安」の牛すじ煮込みはまずまず。
ニラを入れ込んでもらったものの、
煮込みとニラの相性は別段どうということはなかった。
時間も押してきたし、そろそろ焼き鳥に移行せねば―。

最初のオーダーはハツモトとハラミを塩で。
ハツモトはハートとレバーを繋ぐ動脈。
コリコリとした歯ざわりに滋味もじゅうぶんだ。
ハラミは焼肉屋で食べる牛のそれとはまったく異なる。
あばら骨を包む横隔膜でクニュクニュ感を楽しむことができる。
相方のM鷹サンも満足そうに笑みを浮かべていた。

思えば焼き鳥屋で正肉・ねぎま・ササミ・手羽先の類いを
注文することはほとんどない。
コースの場合は仕方がないが
そうでないとどうしても内蔵中心になってしまう。
ハツとレバーは必食。
ほかには首肉のせせり、お尻の先っちょのボンジリあたりだ。

瓶ビールをさらにお替わりしていよいよ肝である。
それも一般的なレバー、いわゆる肝臓ではなくて背肝。
あまり聞きなれないかもしれないが背肝は鳥の腎臓だ。
丸一羽のローストチキンを召し上がった方なら覚えがあろう。
内臓を抜かれて空洞となった中心部、
あばらの奥にこびり付いている小片が背肝で
肝臓ほど大きくはない。

1羽から少量しか取れないから
1串の態を成すには相当の寄せ集めが必要。
したがって「駒安」のラインナップでは最高額の220円也となる。
これはタレでお願いした。

待つこと10分、焼き上がった背肝はミディアム・レア状態。
熱いところをさっそくいただくと、レバーに似てはいるものの、
独特の食感と風味が食欲をそそること、そそること。
もしもどこかの店で遭遇したら是が非でも試していただきたい。
希少部位を提供する奇特な焼き鳥屋において
どれか1本と問われれば、J.C.は迷わずコレですネ。

まだ腹は八分目どころか六分目がいいところ。
定番のハツ&レバにいきたい気持ちはやまやまなれど、
次なる会も一種のパーティーにつき、
それなりの料理が用意されているハズ。
ストマックに余裕を持たせておきたい。

勘定を済ませ、神楽坂を散策することもなく、
JR飯田橋駅へと向かう。
代々木上原のうなぎ屋に始まり、渋谷のヘアサロン、
神楽坂の焼き鳥屋、そしてこれから田端のスナックだ。
長い一日はまだまだ終わることがない。

=おしまいー

「駒安」
 東京都新宿区神楽坂1-11
 03-3260-3549