2017年2月16日木曜日

第1560話 素晴らしき土曜日 (その14)

御徒町で下地は作ってきたものの、
目当ての店の予期せぬ満席でちょいとした晩酌難民状態。
はて、どうしたものかのぉ。

池之端のそば屋「新ふじ」を断念して根津の町に到着。
よく利用する広東料理の「楽翠荘」は小皿料理を供する。
今のシチュエーションに合致するけれど、
どうせなら二人で訪れたほうがより楽しめる。

ほかにも「華」、「オトメ」、「BIKA」など
東京メトロ千代田線・根津駅周辺には
ある程度のレベルに達したチャイニーズが少なくない。
少なくないけれど「オトメ」のほかは単身利用に向かない。

駅裏の路地には食堂と酒場を兼ねる「かめや」、
その隣りには居酒屋「車屋」がある。
どちらも悪くはないがイマイチ決定力に欠けるため、
心動くことなく見送りとする。

裏筋の通称・へび道をゆく。
道がくねくねと曲がっているのは藍染川の名残りで
現在も道路の下に暗渠となって川は流れているハズ。
ほどなく三崎(さんさき)坂に抜け出た。

このまま坂を横断して直進すれば谷中よみせ通り。
そうは行かずに坂を左折し、
ほどなく不忍通りにぶつかって千駄木交差点。
明治の日本文学香り立つ団子坂下である。

進むべき方角は二者択一。
西は白山上、北なら道灌山下となる。
このままずっと北に行ったら本日の散策のスタート地点、
駒込に通じ、双六(すごろく)ならば振り出しに戻ることになる。

いくらドヒマな休日とはいえ、
ひとまずそいつは避けておきたい。
承知のうえで進路を北に取った。
その間たったの1分、
以前から気になっていた中華屋の前を通り過ぎた。

振り向けば店の横壁に大きな毛沢東の肖像が描かれている。
この絵は相当にインパクトが強いから一度拝んだら忘れられない。
おそらく読者の中にも
かなりの数の目撃者がおられるのではないか―。
いつか入店しようと思っていたこともあり、
それは今日だ! と決断に及ぶ。

ちょうどこの時期、朝日新聞の夕刊で
毛沢東と林彪(リンピョウ)の確執を
つまびらかにする特集記事が組まれており、
そんなことにも背中を押されるカタチとなった。

=つづく=