2017年2月20日月曜日

第1562話 素晴らしき土曜日 (その16)

台東区と文京区にまたがる谷根千の一郭、
団子坂にほど近い「毛家麺店」のカウンター席にいる。
迷いながらも生ビールの友として選んだのはニラ饅頭だった。
 
ニラは好きな葉野菜ながら、
その使い途がけして多彩とは言えず、
ニラ玉、ニラレバのほかは
せいぜい餃子にチラリと顔を出す程度。
 ところが中華料理の点心となればこのニラ饅頭、
海老餃子や小籠包子と肩を並べる人気者なのだ。

  ♪   子供たちが空に向かい
     両手をひろげ
     鳥や雲や夢までも
     つかもうとしている
     その姿はきのうまでの
     何も知らない私
     あなたにこの指が
     届くと信じていた    ♪
      (作詞:久保田早紀)

BGMが久保田早紀の「異邦人」に替わった。
当時21歳だった彼女のデビュー曲。
ハタチそこそこの女の子がどうしたら
こんな詞が書け、あんな曲がつくれるのだろう?
あふれ出る才能に瞠目したものである。
殊に二番の歌詞がすばらしい。

  ♪   市場へ行く人の波に
     身体を預け
     石畳の街角を
     ゆらゆらとさまよう
     祈りの声 ひづめの音
     歌うようなざわめき
     私を置き去りに
     過ぎてゆく白い朝   ♪

子どもの頃から当時イランに赴任していた父親が持ち帰る、
当地の音楽に慣れ親しんだのが
彼女の音楽的下地に大きな役割を担ったとはいうものの、
あの若さではなかなか書けない詞なのだ。

J.C.はイランを訪れたことはないが
エジプトのカイロやトルコのイスタンブールでは
そこそこの時間を過ごしている。
歌詞の赤字部分はまさしく、
カイロであり、イスタンブールであった。

もともと「白い朝」というタイトルだったこの曲を
「異邦人」にすげ変えたのは
敏腕プロデューサーの酒井政利。
キャンディーズや山口百恵を世に送り出したカリスマで
あの帝銀事件の犯人とされた、
死刑囚・平沢貞通の隠し子と噂されている人物である。

=つづく=