2020年11月6日金曜日

第2519回 知らない町で晩酌を

東中野から向かったのは新井薬師前。

近くにある新井山梅照院王寺の通り名が

そのまま西武新宿線の駅名にもなっている。

しばし境内にたたずんで沿線沿いに歩く。

 

沼袋・野方・都立家政・鷺宮を経て下井草に―。

過去に一度散策したが、この町で飲んだことはなく

今宵のファースト・ターゲットだった。

線路の両側を流したものの、まだ16 時過ぎで

チェーン以外に開いてる店が少ない。

博多ラーメンと大型大衆鮨店くらいのものだ。

下井草で1杯飲りたかったんだがなァ。

 

仕方なく先に進んで隣り駅の井荻へ。

ちょうど1年前、中国料理の「維摩(ゆいま)」で

晩めしを食べたのが初訪問、今回は二度目だ。

下井草より活気があって止まり木はすぐに見つかった。

 

西武線沿線に何軒かある「やきとり にしだ屋」は

店頭販売もしており、買い物の主婦が三々五々やって来る。

先客一人のカウンターに落ち着いた。

毎度のことながらノドを鳴らしてジョッキを傾ける。

好みのスーパードライは泡薄めでドンピシャだ。

 

塩で通した白レバーとハツモトは水準をクリア。

目先を変えるつもりの、かきベーコン・ガーリックオイルは

粉チーズもタップリと、舌先にまで変化をもたらす。

価格帯は150200円、平均的だろう。

 

2杯目の中ジョッキに焼き鳥ではなく焼きとんを1本。

“もつ鍋に入ってるアレです”と但し書きがあり、

タレで頼んだシロコロだったが脂身の付きはともかくも

ホルモンの下茹で不十分、ずっと口内にとどまったままだ。

どうにも噛み切れず、悪戦苦闘に目がシロコロ。

じゃなかった白黒、最後にエイヤッ!と飲み込んだ。

 

なおも沿線を西下して上井草の町。

西荻から善福寺公園経由で訪れたのはもう一昔前になる。

夜の帳がすっかり落ちた商店街の片隅、

「やきとん だるま」のやはりカウンターに陣を取る。

ここも高円寺や西荻に展開しているチェーン予備軍。

場末(失礼!)で個人経営の佳店を発掘するのは至難だ。

 

とにかく歩いたから体内へのガス注入は未だ満タンにほど遠い。

速攻で黒ラベルの生中を発注。

串はみな70円と都内でも最安値圏の位置取りである。

カシラとハツを塩、レバーをタレでお願いした。

 

いや、赤身と脂身が入り混じったカシラの硬いこと。

「にしだ屋」のシロコロとは

異なるタイプの難敵に再び苦戦を強いられる。

ハツとレバーはどうにかなったが値段が値段だから

素材の質に限界があるし、下処理も大ざっぱだ。

 

ジョッキのお替わりとハムカツを1枚いただき、早めのお勘定。

当たり外れはあろうとも、知らない町での晩酌はまた楽しき哉。

夜の商店街を往ったり来たりして、帰りの電車に乗り込みました。

 

「やきとり にしだ屋 井荻店」

東京都杉並区上井草1-30-17

 03-6913-7828

 

「やきとん だるま 上井草」

東京都杉並区上井草3-32-6

 03-6913-6230