2020年11月25日水曜日

第2532話 飲み屋に事欠く茗荷谷

名横綱・栃錦のアトだからって相撲取りの明武谷じゃないヨ、

かつて早稲田と肩を並べる茗荷の産地だった茗荷谷ヨ。

まっ、神田川をはさんで隣り同士なんだけどサ。

 

せっかくだから明武谷を紹介させてもらおう。

アイヌの血を引くと言われる、

道東出身のお相撲さんは上手投げとつりを得意とし、

たびたび見せた豪快なうっちゃりが天下一品。

あの大鵬を土俵際でクルンと180度回転させたこともあった。

 

それはそれとして茗荷谷。

此処は飲み屋がやたら少ない。

もともと文京区には真っ当な居酒屋がほとんどない。

大学だらけ、それも名門女子大の多い土地柄は

文教に注力して酒池肉林から努めて遠ざかろうとする。

隣りの台東区と雲泥どころか

天国と地獄、両極端の様相を呈している。

 

そんななか「和来路(わらじ)」の存在は貴重だ。

しかも16時半の暖簾出しは

文京区長の許しを得ているんだろうか?

 

生暖かい秋の夕暮れ。

開店直後に訪れると6席のカウンターはほぼいっぱい。

1席だけ残っており、辛うじて滑り込む。

中ジョッキは黒ラベル、お通しはつかない。

 

お客サンは近隣の常連ばかりでヨソ者はわれ一人。

本日のおすすめから

スマガツオ刺しと迷いながら平目薄造りを通す。

スマは縞目のハッキリとした小型のカツオだが

カツオ系は外すと身動き取れなくなる危険をはらむ。

 

こうして注文した平目だったが

ちっとも薄くなく、ほとんど刺身状態だ。

ポン酢と紅葉おろしで食べるにはあまりに厚すぎた。

追加したスーパードライの大瓶に助けを借りて

どうにか全部やっつけた。

 

サントリーが出している翠(すい)という名のジン、

そのソーダ割りに切り替え、

あらためておすすめボードをチェック。

いさき昆布〆、ハムカツ、かきフライに食指が動きかける。

 

熟慮して2本しばりの軟骨入りつくね焼きを通した。

ふむ、ふむ、この軟骨はヤゲンだな。

食感はいいんだけど、つなぎに工夫が足らずパサパサ。

一仕事要するつくねは難しいんだ。

つくづく思った次第なり。

 

「和来路」

 東京都文京区小石川5-4-8

 03-3943-6565