2022年7月14日木曜日

第3058話 88年 キラキラひとすじ (その1)

クソ暑い午後、日暮里の銀行に寄って、そのあと。
夏は好きだから苦手な人よりはまだ楽だが
最近はそうもいかなくなった。

以前なら炎天下の長距離散歩なんか屁のカッパ。
好んで日向を歩いたのに、ここ数年はダメだ。
日陰を択ぶようになっちまった。
寄る年波には勝てませんわ。

こう暑くちゃ、そうめんでも
ツルッとやるしかないかな?
そうめんって、内で茹でたことはあるけど
外で注文したことは一度もないネ。
やっぱりもりそばにしとこう。

バスが発着する駅前ロータリー。
此処から出るのは主に錦糸町行きと亀戸行き。
終点はJR総武線の隣り駅同士ながら
ルートはずいぶん異なる。
浅草・押上を経由する前者は近道。
三ノ輪・向島を通って行く後者は遠回り。

ともに本数は多いほうだが、それでも待ちたくない。
どちらもOKの二面(リャンメン)待ち。
先発の亀戸行きに乗り込んだ。
そうしておいて降りる先を考える。

隅田の大川を白髭橋で渡り、
百花園から東向島広小路。
ふと思いつき、橘通りで下車した。
此処は下町人情キラキラ商店街入口である。

気に入りの道筋を歩いてしばらく、
目当ての日本そば屋に到着。
店頭で海老やアジやイカのフライを
販売しており、何度か見かけているが
入るのは初めて。
「五福家」なる屋号も知らなかったくらいだ。

年季の入った引き戸を引くと、
TVの前に座っている店主が立ち上がり、
先客もいないのにその席を促され、
本人はオモテに出て行ったヨ。

女将サンにドライの中瓶をお願いし、
もりそばと決めているものの、一応品札を見回す。
これは将棋最終盤における形作りと同じだ。 
そしたら2枚の短冊に目がとまった。

チャーシューの美味しい チャーシューメン 800円
スープのうまい ラーメン 600円

もりと決めていたのに思わずラーメンを発注していた。
冷たいビールが暑気を払ってくれたんだネ、きっと。

=つづく=