2022年10月6日木曜日

第3118話 さまよえる世田谷・渋谷 (その3)

渋谷東口からバスに乗ってほどなく國學院大學。
所在地は渋谷区・東(ひがし)だが
旧名は常磐松町といった。
昔は常盤松町だったが常磐松に改称されたのは
皿は割れやすく、石は割れにくいから。

町名は当地の氷川神社に在った神木、
常磐松に由来している。
源義経の実母、常盤御前が植えたという、
説もあるがかなり疑わしい。

日本史を専科とする國學院大學の地元だから
信憑性は増すものの、
皿の代わりに今度は意見が割れそうだ。

現在、常磐松の名称は小学校と交番に残るくらい。
常陸宮のお住まいだけは
常盤松御用邸と”皿”を守り続けている。
やはり皇室がからむと
そう簡単に変更などできないんだネ。

途中下車はせず、終点の医療センター着。
真向かいは東京女学館である。
國學院と同じ頃に創設された名門校ながら
経営難に陥り、大学はすでに閉学。
今は小・中・高等学校が存続している。

医療センターに用はないし、女子高にも用はない。
ただ、緑深き場所だから散策してみようかな?
いや、やめとこう。
女学校の周辺をむやみやたらに
ウロウロするもんじゃない。
実はイヤな思い出があるんだ。

あれは10年前だった。
下町散歩のあと、そろそろ帰宅しようと
鶯谷駅前を通りすがった。
この駅には改札が2箇所あり、
北口は谷底、南口は高台だ。

その高台で出し抜けに声を掛けられた。
「どちらに行かれますか?」
声の主は若い警官。
立ちふさがるように突っ立っている。

こいつは職務質問、いわゆる職質だな。
ピンと来ると同時にカチンと来たJ.C.、
「ボクはそんなに怪しい人間に見えますかァ?」

想定外の剣幕にたじろいだヤングポリス、
二の句が継げずに唖然、茫然。
このとき、傍らから割って入った闖入者がいた。

=つづく=