2022年10月13日木曜日

第3123話 靖国神社の玉子丼 (その2)

靖国神社境内の「八千代食堂」。
英霊には申し訳ないが、いつものように
ドライの中瓶を飲みながら待つこと10分。
整った膳にはキラキラ輝く玉子丼に
箸休め程度のつぼ漬けたくあんと
小さなわかめ味噌椀が寄り添っていた。

いきなり玉子丼に箸をつける。
うむ、む、む、む、む・・・
うまぁ~い! 相当にうまい。
This is お世辞抜きでありまする。

トロトロにとじられた玉子は白身の透明感を残し、
追いがつおならぬ、追い白身の功績だろう。
玉ねぎの切り方、火の通し方、
ごはんの炊き上がり、いずれも申し分ナシ。

甘みは砂糖と味醂のW甘味。
とても好い塩梅だ。
どんぶりモノのつゆだくは好まぬが
玉子丼、親子丼の場合は致し方ナシ。
そこを差し引いてもうまい。

生涯ベストの玉子丼であった。
もっとも3回ほどしか食べてないけどネ。
とにかくトメさんの玉子丼は超オススメ。
大空に花と散る前にこのドンブリを食べて
飛び立った若鷲に思いを馳せれば
ありがたみが加味され、余計にうまい。

会計は1750円也。
桜の名所、千鳥ヶ淵に出て
右手に国葬が執り行われた武道館を見ながら
九段坂公園を下りてゆく。

明治以前、坂には九段の段差が設けられており、
これがそのまま名称となった九段坂。
明治以降は段差が取り払われ、
坂となったが、あまりに急勾配で
荷車がたやすく登れるものではなかった。

坂下にはそれを手助けして
いくばくかの報酬を得る、
”立ちん坊”が待機していたという。
勾配がゆるやかになったのは震災後のことである。

菜の花の名所、牛ヶ淵に下りたとき、
いきなり異臭に襲われた。
この辺はいちょう並木で落下した銀杏が
歩行者に踏みつぶされていた。
図らずもここで一句。

銀杏の狼藉(ろうぜき)踏みし九段坂

それにしてもおっ母さんと千代子の母娘は
九段下までどうやって来たのだろう。
JRの飯田橋からはかなり歩くし、
市ヶ谷からでは逆方向で九段坂を上れない。
東京駅から都電だろうネ。

♪   あれが あれが 九段坂
  逢ったら泣くでしょ にいさんも ♪

「靖国八千代食堂」
 東京都千代田区九段北2-1-4
 03-6256-8225