2016年1月18日月曜日

第1275話 食べ比べて ゆず切り (その5)

JR山手線・御徒町駅から徒歩2分の日本そば屋「吉仙」。
東京メトロ日比谷線・仲御徒町からなら1分と掛からない。
地番は台東区・台東四丁目だ。
都内有数のディスカウントショップ、
「多慶屋(たけや)」のすぐそばにある。

相方のT栄サンとつまみの吟味に入った。
本まぐろや寒ぶりはお高いので目を付けたのが小肌酢。
われわれの小肌酢が到着する前に隣りの卓の刺身が大皿で運ばれた。
べつに盗みみたわけじゃないが
チラリ、目に映った光景はかなり豪勢な印象。
男二人に女一人の三人組は雰囲気からして接待だと思われた。
どちらがする側される側までは図りかねましたがネ。
 
彼らはJ.C.から見て左サイド、
今度は右サイドに中高年の男ばかりが三人着席した。
みな真っ黒や濃いグレーのスーツ姿だ。
接客係には全員揃ってから始める旨を伝えている。
四人用テーブルなのでメンバーはもう一人。
 
そうこうするうち、われらの小肌が整った。
品書きに長崎産とあったからおそらく天草だろう。
まず壱岐や五島ではあるまい。
かすり模様が美しく、なかなかの上物とみた。
 
あくまでも“小肌”であって“巨肌”ではない。
”巨肌”だけは願い下げだ。
わさびは残念ながらマゼ。
ただし本物の香りを失っておらず、質自体は悪くない。
天草の海の幸を一切れ口元に運ぶ。
酢の〆具合よろしく、けっこうな仕上がりである。
 
さすがに「本陣坊」グループ、
そば屋でありながら生モノを豊富に取り揃えて
売上を伸ばしてきただけのことはある。
 
ここでわれわれは日本酒に移行。
特段、愛飲しているわけでもない八海山を冷酒で所望する。
しっかりと正一合を謳って金800円也。
これまたやや高めの値付けだ。
ときたま訪れる文京区・道灌山下の食堂「K」は
同じ銘柄がやはり正一合で600円だからネ。
 
「吉仙」は生モノのみならず、
天ぷらもウリにしている。
穴子天に桜えびのかき揚げをお願いした。
経験上、そば屋においては刺身よりも天ぷらで飲むほうがよい。
もっとも刺身のあるそば屋はめったにないがネ。

1分後、接客のオニイちゃんが手ぶらで戻って来た。
何事であろうや?
 
=つづく=