2016年1月1日金曜日

第1264話 牡蠣よ 愛しの 牡蠣よ (その2)

新年おめでとうございます。
今年もよろしく願います。

さっそく松本清張のつづきです。

その後、読み返してみたら
この小説が欠点だらけの穴だらけということに
否が応でも気づかされるのだが
最初の男が悪い奴にもかかわらず、
情を移してしまった哀れな女の如くに
この粗悪な作品を憎めないまま今日まできた。

たまたま昨年の11月に
テレビ朝日の開局50周年記念ドラマとして放映されたので
興味を持ってテレビの前に座った。
二夜連続の第1部では
ビートたけしの鳥飼刑事にどうにもなじめず困惑したものの、
二晩目になると慣れてきてシックリくるようになり、
それなりに楽しめた。

デキ自体も第2部のほうがよかったが
やはり不自然な筋書きに違和感を覚えた。
ターゲットだけを殺害すればこと足りるのに
余計な心中に見せかける。
アリバイ工作のつもりが逆に捜査陣に手懸りを与えてしまう。
犯人が自ら墓穴を掘る不始末が多すぎるのだ。

第一ポイントとなる東京駅ホームの4分間に
目撃者がトイレに行ったりしたらどうなるんでしょうね。
原作の不首尾がそのまま忠実に
ドラマ化されるご愛嬌に苦笑いだ。
 
3年ほど前、九州・博多を旅した際、
ふと思いついて「点と線」の舞台となった、
香椎を訪れ実際に町を歩いてみた。
小説の鳥飼刑事さながら
JR鹿児島本線・香椎駅から西鉄・香椎駅を抜け、
事件の発生した海岸を目指す。
ところがその後の埋立て工事のせいで
もはや原形をとどめていない風景にぼう然とした。

この数年前、やはり松本清張作「砂の器」の舞台、
島根県のJR木次線・亀嵩駅を訪ねて
変わらぬ山間の素朴な駅舎を目に焼き付けてきただけに
失望と落胆は小さくなかった。

小説「点と線」の冒頭、
犯人たちの待ち合わせに利用されるレストランが登場する。
1947年創業の「レバンテ」である。
自作品に載せるくらいだから清張も何度か訪れていよう。
数年前まで有楽町駅前でレトロな姿を見せていたが
現在は線路のの反対側の東京国際フォーラムに移転している。
元あった場所には今マルイが出店する有楽町イトシアが建っている。

この「レバンテ」は大好きな店だ。
清張が食べたかどうか定かでないが
シーズンを迎えると三重県・的矢湾から直送される、
牡蠣が最大の目玉商品になる。

=つづく=