2016年11月7日月曜日

第1485話 うな重だけではもったいない (その4)

道灌山下のうなぎ店「稲毛屋」をT田サンと訪問。
仕事ぶりを直接見られる食べ物屋のカウンターは大好きだから
1階のカウンター席でいっこうにかまわないが
久々の再会でもあることだし、2階の畳をお願いしてあった。
 
ところが2階に通されてビックリ。
以前は入れ込みの座敷だったハズが
いつの間にかすべて個室にリノベイトされているではないか―。
個室はあまり好きじゃない。
考えすぎかもしれないけれど、
よからぬ密談、あるいは許されぬ逢瀬、
そんなうしろめたさがつきまとって心が晴れないからだ。
こりゃ間違いなく考えすぎだネ。
 
とにかくかつての広間のほうが
「庶民のうなぎ屋」といった空気に満ち満ちて断然よかった。
鮨や天ぷらはカウンターに限るが
そばやうなぎは畳の上がよい。
これがどぜうとなったら、もう畳以外は考えられない。
まっ、時の移ろいとともに
経営者の方針も変わるから仕方なかんべサ。

互いに好みの銘柄、スーパードライで乾杯。
酒を酌み交わすのは10年ぶりだが
初めて会ったのは30年近くも以前。
ちょうどアサヒ麦酒がこの新製品を世に送った頃だった。
口にしたのはマンハッタンの総合和食の店、
「レストラン日本」で、T田サンが同席していたハズ。
さわやかな飲み口にわれわれは魅了された。

予約時に抑えておいた肝焼きとレバ焼きが運ばれた。
垂涎の4串
一目で美味を確信する。
どちらもタレ焼きである。

肝とレバは同じだろ! ってか?
おっしゃる通りではありますが
ことうなぎ屋では臓物全体を肝、
肝臓をレバと呼ぶのである。

まずはレバから。
世に肝臓は数あれど、J.C.はそのほとんどを好物としている。
もつ焼きならば豚、しぐれ煮やペーストは鶏がよい。
牛レバーは刺身よりも
刺身に使用される良質なものをサッと網焼きにしたのが好きだ。

水の都、北イタリアはヴェネツィアの郷土料理に
フェガート・アラ・ヴェネツィアーノがあるが
こちらは仔牛のレバーと玉ねぎを炒め煮にしたものだ。
1971年、最初の海外旅行の際に
現地で食べたときの旨さをこの舌は今も忘れない。

=つづく=