2016年11月10日木曜日

第1488話 うな重だけではもったいない(その7)

道灌山の「稲毛屋」にてT田サンと旧交を温めているのだけれど、
またもや脱線の巻である。
とにかくお呼ばれしたお宅で
料理自慢の奥方の手料理をいただいている。
3品目のぬたに気落ちしていたのである。

ところが・・・であった。
何の変哲もないぬたがトンデモない美味なのだ。
一見、青ねぎのぬた風だったがワケギ(分葱)だろうか?
いや、もっとずっと細身にしてデリケート、
これはアサツキ(浅葱)に違いない。

訊ねると、やはりそうでありました。
辛子酢味噌の塩梅もよろしく、
ふ~ん、奥さんやるじゃないの、そう思ったことでした。
似たようなネギの仲間に万能ネギや鴨頭ネギなどがあるが
アサツキは抜群の食味と食感を擁している。
以来、アサツキのぬたは大好物になったのでした。
ありがとうネ、奥さん!

「稲毛屋」に戻りましょう。
芋焼酎・佐藤 黒の合いの手にJ.C.が選んだのは
九条ネギのぬただった。
アサツキよりもずっと大ぶり
 九条ネギを愛でてやまない上方の人々には申し訳ないけれど、
美味しさはアサツキに及ばない。
及ばないが滋味に富んで、何よりも芋焼酎にピタリと寄り添った。
賢明な選択だったと言えよう。

さらにもう1品。
今度は相方がチョイスする。
どう見ても奈良漬ですな
品書きには白瓜の粕漬とあった。
品名から想像したのは薄い黄緑色の皮を持つ瓜が
白い酒粕をまとって現れる姿、少々鼻白むものの、
奈良漬は大好きだからこれはこれでよかろうという気になった。

でもやっぱり酒粕には日本酒であろう。
再び清酒に舞い戻る。
その名を聞き及んではいたが味わったことのない奈良萬を見つけ、
奈良漬には奈良萬でしょ、今飲むしかないでしょ、意見の一致をみる。

ほのかな甘みを蓄えた福島・喜多方の酒は白瓜とシンクロナイズ。
瓜をカリッとやって一口含むと奈良萬の甘味が打ち消された。
そんなこんなで二人ともやや酩酊気味、
頃合いもよかろうと、うな丼の調整をお願いした。

注文が入ってから、焼き・蒸し・焼きの過程を踏むのではなくとも、
うなぎには多少の時間を要する。
自制心を失った二人は奈良萬のお替わりに走ったのでした。

=つづく=